『沈黙の艦隊』『ジパング』や昨年映画化された『空母いぶき』で多くの愛読者を持つ漫画家のかわぐちかいじ氏は、東京都小金井市に40年以上住んでいる。現在、同市は新型コロナウイルスのワクチン接種をハイペースで進めており、7月からは64歳以下の接種も始まっている。そこで若い人に接種を呼びかけるため、かわぐち氏に依頼してポスターを作成することになったという。
7月9日、小金井市医師会館において、小金井市医師会、小金井市薬剤師会、小金井市、「こびナビ」の合同記者会見が開かれ、その席上、ポスターのお披露目が行われた。「こびナビ」はワクチンに関する正確な知識を一般に啓蒙するために活動している団体である。
この日の会見には、かわぐち氏も出席。かわぐち氏によれば、住んでいる地域に感謝し、何かを還元したいという思いもあって、小金井市医師会からの依頼を即座に引き受けることにしたそうだ。無償だという。
ポスターの題材にもなった連載中の作品『空母いぶきGREAT GAME』では有事における自衛隊の活躍を描いているが、「新型コロナという有事に、ワクチン接種は感染率や重症化率を下げて自分自身や周りの人を守ってくれる点で、自分と周りの人を守るために戦う自衛隊と重なる」という。
かわぐち氏にポスターを依頼した小金井市や小金井市医師会の狙いは何だったのか。ワクチン接種において日本のはるか先を行く国々で、必要回数の接種を済ませた人の人口比は、イスラエルで約57%、アメリカで約48%、イギリスで約52%(7月9日時点:Our World in Dataより)。いずれの国でも50%前後から増加率が顕著に落ち、60%に届いていない。その理由として、「こびナビ」副代表でウイルス研究者の峰宗太郎氏は、若年層で「自分は重症化しない」との思い込みからワクチン接種への興味が薄いことや、「ワクチンを打つと不妊になる」「人類の数をコントロールしようとしている」「死亡者が多数出ているのに隠蔽されている」「ワクチンと一緒にマイクロチップを体内に注入される」といったデマの流布などをあげる。だが、この5割の壁を越え、接種率をさらに上げていかないと、集団免疫の獲得はできない。