得意技はギロチン・ドロップ。多彩な技で人気を博し、「女帝」と呼ばれるまでに
結婚で変わった人生観
その後、アメリカでの試合中にひざの靱帯を断裂し、30才で引退を余儀なくされた。
「志半ばで実家に戻り、歩くこともできず、半年間引きこもり状態でした」
次の目標を探るも、プロレス以外何もできない自分に焦燥感が募ったという。
「それでも両親は、『高校も大学も行かずに頑張ってきたんだから、何もしなくていいよ』と言ってくれました。ありがたかったです。それで、以前からやってみたかったゴルフに挑戦することにしました。体重が115kgあったので、動ける体をつくるために、ダイエットして3か月で50kg落としました」
クラブの握り方もわからない状況で、プロ研修生としてゴルフ場に入った。
「ブル中野であることを隠していたんですが、いつの間にかバレていて、一般の人まで練習を見にくるようになったんです。こっちは真剣に練習したいのに、『ブル中野』で定着したイメージのために、かっこ悪いところを見せられない。このまま日本にいては上達しないと思い、単身アメリカに渡りました」
約9年、アメリカのアマチュアツアーなどに参加したが、プロテストには合格せず、40才で再び実家に戻った。
「プロレスラーを引退してからは、表舞台に出ないように生きてきました。次の生きがいを見つけるまで、世間にブル中野だと知られたくなかったんです。プロレス仲間とも一切連絡を取りませんでした。何もない自分では会いたくなくて……」
あるとき、近くのムエタイジムの前を通り過ぎると、ガラス越しにリングが見えた。
「懐かしくて、運動不足解消を兼ねて通い始めました」