16冊の刊行を経て感じた手応えと今後の目標
無事にシリーズ化した「売れてない芸人(金の卵)シリーズ」は、18社のプロダクションとフリーで活動する芸人を巻き込みながら、これまで16冊の書籍を刊行してきた。
「このシリーズの面白さは『生き様×エンターテインメント』にあると思います。テレビやYouTubeで、生き様をストレートに伝えるものがありますが、個人的には、その真っすぐさゆえに、見ていて辛くなることが少なくありません。
その点、芸人さんは、大変なことや辛いことでも、笑えるエピソードとして、エンタメに調理して、テキストで面白おかしく伝えてくれます。これが他のものとの大きな違いであり、魅力です」
16冊目として刊行されたのは、今年のR-1グランプリで決勝進出を果たしたお笑い芸人・土屋の『芸人ごっこ 〜ピンになる覚悟もなかった俺がR-1の決勝に行った話〜』だ。早くもAmazon Kindleのエンタメ部門「新着ランキング」で3位(7月15日現在)を獲得しており、さらに話題を呼ぶ可能性もある。
「このシリーズは、まだまだこれからです。はじまったばかりです。書いていただいている芸人さんたちは、みなさん、本気で取り組んでいただき、『自らが楽しみ、読者をより楽しませよう』と全力で執筆していただいるため、1冊1冊全てが面白い作品です。もっともっと多くの人に読んでもらいたいです。
今後は、『シリーズ100冊でテレビに取り上げられること』を目標にしています。シリーズパートナーのデザイナー飯田亜紗美さんと言っている合言葉は『#100冊でテレビへ』。売れてない芸人さんの今だからこそ書ける話と、人を笑わせてやろうという底力を、ぜひ読んで味わっていただきたいです」
芸人として売れるかどうかと、優れた芸を持っているかどうかは、必ずしもイコールではない。自らの“生き様”を全力で執筆した書籍のクオリティも、こうした評価軸とは異なる魅力を持っているだろう。その意味ではいずれ“売れてない芸人”がステータスになる日も来るのかもしれない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)