海外移転させた資産を不動産に

 物件資料として図面や写真、動画を送ることも可能だ。しかし、現地を実際に見ることはかなり困難。入国できないからだ。それでも、「分かった、その物件を買う」と決めてしまう中国人は少なくないらしい。

「先日も数十億円のビルを売りました。お金はスイスとケイマン諸島の銀行から送られてきましたね」

 私のところにやってきた、中国人富裕層のエージェントはそう言っていた。どうやら、中国人の富裕層たちは自国から外貨を持ち出すのではなく、すでに海外に移転させた資産を日本の不動産に変えようとしているのだ。

 もとより、中国の外貨持ち出し制限はかなり厳しい。

「この前まではビットコインなんかが使われていましたが、今はそれもできなくなったみたいです」

 中国がビットコインなどの仮想通貨を目の敵にして規制しているのは、それが外貨持ち出しの抜け穴になっていたからなのだろう。

中国人にとって東京の不動産は「安い」

 さらに、中国人にとって東京の不動産は「安い」水準に見えている。

 その理由は、ニューヨークやロンドン、パリなど世界の一流ブランド都市の一等地に比べると、まだまだ東京の不動産は安いという現実がある。自国の主要都市である北京や上海、深センの不動産と比べてさえ、東京は安いのだという。

 例えば、北京のマンションを賃貸運用すると、利回りは普通に1%台。東京の港区あたりだと3%から4%。しかも、中国は最長70年の借地権でしかないが、東京に限らず日本では完全な所有権。外国人の不動産所有には今のところ何の制限もない。

 そんな東京の不動産が、中国の富裕層にとってかなり魅力的であることには、ある程度納得できる。

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