ライフ

医師の「インスリン・オフ療法」を支えるタンパク脂質食

水野雅登医師が解説

水野雅登医師

 患者を服薬のストレスやリスクから解放する“断薬”。だが、「やめたいけど、なにをどうすればいいのか」と疑問を持つ患者は多いだろう。そこで今回は糖尿病治療で使われるインスリンについて、「断薬に至るプロセス」を医師に詳しく教えてもらった。

 糖尿病が進行して一度インスリンを始めると、“一生のつきあい”になるといわれている。しかし、『糖尿病の真実』(光文社新書)の著者の水野雅登医師は、これまでに2型糖尿病(※注)患者84例すべてで、脱インスリンを実現させた。

【※注/糖尿病は原因によって「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分類される。1型は「膵臓のβ細胞が壊れ、インスリンがほとんど分泌されなくなる」、2型は「主に生活習慣により、インスリンの分泌量が減った」ことによるもの。糖尿病患者の95%が2型糖尿病に当たる】

「他院から転院した患者からは『なぜインスリンを打っているのに、膵臓は回復しないのか』と質問されることが多いです。

 これまでは、インスリン注射を打つことで、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞を休ませて回復させるというのが医師の常識でしたが、実際は弱っているβ細胞にさらに負担をかけ、弱体化させていたのです。そこで始めたのが糖質を抑えた食事や薬で膵臓の負担を最小限にするインスリン・オフ療法です」(水野医師)

 インスリンを打つと低血糖になるため、「『1日のエネルギーの6割を炭水化物で摂りなさい』と医者に言われているんですが……」と戸惑う患者も多いという。

「これは糖質を過剰に摂取して悪化した糖尿病患者に、『さらに糖質を摂り続けなさい』と指導しているも同然です。しかもインスリンを打つと強い空腹感を感じ、暴食しがちになる。この悪循環で、血糖値はどんどん上がり、インスリン注射も増えてしまいます」

 水野医師のインスリン・オフ療法の根幹を支えるのが「タンパク脂質食」だ。1日に最低でも体重の1.5倍以上のグラム数(体重60kgなら90gという意味)のタンパク質を摂るというもの。

「タンパク質で筋肉を増やして糖の消費を促進し、膵臓を休ませることでβ細胞の働きを回復させます。

『すぐにタンパク脂質食を始めたほうがいいか』と質問を受けます。糖尿病予備軍やまだ薬を処方されていない方は始めても構いませんが、すでに内服薬やインスリンを処方されている場合は、低血糖で危険な状態になるケースもあります。

『インスリンをいつやめていいのか』もよく訊かれますが、どちらもかならず医師の判断に従ってください」

 タンパク脂質食が逆効果になってしまうのは、「肝不全」や「膵炎」などの患者だという。肝不全はタンパク脂質の代謝ができないので、エネルギー不足になり、膵炎は高脂質食で悪化する。他にも「長鎖脂肪酸代謝異常症」や「尿素サイクル異常症」の患者にも厳禁だ。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン