お金の価値に対する感覚は人によって様々だが、1票の価値が205万円と聞けば「そんなに多いのか」と驚く人が多いのではないだろうか。国税庁の調査によれば令和元年の給与所得者の平均年収は436万円で、1票の価値はそのおよそ半分に匹敵する。また非正規労働者の平均年収は175万円で、1票の価値を下回る。1票の権利を行使することによって自分たちのためにきちんと税金が使われるようにすることが、どれほど重要かがわかるだろう。
村上准教授の方法は、「地域格差」も可視化する。「国会議員1人当たりの年間予算責任額」を小選挙区の有権者数で割ると、その小選挙区の1票の価値が算出できるのだ。
前述した総務省発表によれば、衆議院小選挙区別登録者数(在外選挙人名簿登録者含む)が最も多いのは東京都第10区の48万1534人で、最も少ないのは鳥取県第1区の23万3060人。それぞれの1票の価値を上記の方法で算出すると、東京都10区が約96万円、鳥取県第1区が約200万円になる。同じ1票なのに、東京都10区の1票の価値は鳥取県第1区よりも100万円以上も低くなる。よくニュースなどで見かける「1票の格差」によるもので、1票の“金銭に換算した価値”も左右されるわけだ。
ちなみに参議院議員の選挙区1人あたりの有権者数は宮城が最も多く、神奈川、東京、新潟、大阪が続く。最も少ないのは福井で、佐賀、山梨、和歌山、香川が続く。1票の価値は宮城の約48万円に対して、福井は約144万円とほぼ3倍の差となる。
これらの試算を踏まえて、私たちは1票の価値をどう考えるべきだろうか。
「まず国会議員はひとりあたり1166億円もの予算を背負うという自覚が必要ですし、有権者は1票に200万円以上の価値があることを知ってほしい。200万円あればずいぶんと生活が豊かになるし、好きなことができるはずです。そもそもほとんどの有権者は税金を払っているわけで、その使い道にかかわる権利を行使しないのはあまりにもったいない」