バイルズは棄権後、「悪魔と戦い、ここに来たようなものだ」と苦しい心中を語った(AFP=時事)

バイルズは棄権後、「悪魔と戦い、ここに来たようなものだ」と苦しい心中を語った(AFP=時事)

 リー大学のジェレミー・リタウ教授は、「ナオミはメディアのプレッシャーが選手の精神にダメージを与えると訴えてスポーツ界の共感を呼んだ。五輪で早々に敗れた原因も間違いなくメディアのプレッシャーだった」と手厳しく批判している。また、ロシア国営放送は、バイルズ棄権をとらえて、「米国内にはシモーネの決断に対する批判もあるが、そこには黒人やLGBTQを差別する白人至上主義がはっきり見える」と断じている。

 ロシアのアメリカ批判は政治的側面もあるが、それに正面から反論できないのはアメリカに弱みがあるからだ。二人に対する人種的な差別がなかったとはいえないし、商業的な野心で二人を祭り上げてきたNBCはじめ米メディアは、五輪の舞台を去った二人について不自然なほど黙して語らない。特にNBCは「ドル箱」を失って茫然とするばかり。視聴率急落で、すでにスポンサーから「補償・補填協議」を持ち出されている。視聴率が事前に設定した基準を下回った場合は、NBCがスポンサーのコマーシャルを別番組などで補填するという取り決めだ。

「コロナに呪われた東京五輪」(麻生太郎・副総理兼財務相)はアメリカの至宝だった二人の女王を打ちのめしてNBCを苦境に追いやったが、これで終わりとは思えない。コロナ危機は悪化し、日本でも五輪に対する批判的な声は消えていない。世界から五輪批判が噴出すれば、菅首相が政権を放り投げて逃げ出す事態だってあり得ないわけではない。

■高濱賛(在米ジャーナリスト)

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