国内

小山田氏辞任問題で考える「現在の価値観で過去を断罪する」是非

東京五輪の開会式直前に辞任することになった楽曲担当の小山田圭吾氏(dpa/時事通信フォト)

東京五輪の開会式直前に辞任することになった楽曲担当の小山田圭吾氏(dpa/時事通信フォト)

 コロナ禍で1年延期された異例づくしの東京五輪は、直前になって開会式の楽曲を担当していた小山田圭吾氏の辞任と開閉会式の演出を担当していた小林賢太郎氏の解任が相次ぐなどドタバタ続きだった。今回の騒動は「日本版の“キャンセルカルチャー”として、今後に大きな影響を与えそうだ」と語るのは、作家の橘玲氏だ。キャンセルカルチャーとは、有名人などの差別発言や過去の問題行動を洗い出し、ネット上で激しく批判し、存在を「キャンセル(抹消)」しようとする活動のことだ。その背景になにがあるのか。橘氏に話を聞いた。(全2回の前編)

 * * *
──東京五輪に関して、過去の発言・表現によって「辞任・解任ドミノ」が相次いだことをどうみていますか?

橘:公的な立場にある人物が過去の言動によって批判され、キャンセル(辞任)を求められる社会現象を「キャンセルカルチャー」といいますが、日本におけるはじめての本格的な事例になると思います。アメリカでは10年以上前から繰り返し起きていて、政治家や芸能人だけでなく、最近では大学の有名教員やIT企業の従業員などがキャンセルを要求されて大きな議論になりました。

 キャンセルカルチャーの特徴は、どれほど謝罪しても過去の愚行を蒸し返され、けっして許されないことです。アメリカの有名な事例ですが、米誌『ティーン・ヴォーグ』の編集長に就任予定だった20代の黒人女性が、10年前の学生時代にアジア系に対して差別的なツイートをしていたとして批判され、2019年に謝罪したにもかかわらず、2021年に炎上してキャンセルされています。

 ヴォーグもこの事実を把握しており、「差別的ツイートに関しては、2年前にすでに謝罪し責任をとっている」と擁護しましたが、ボイコット運動を恐れた広告主の出稿停止に耐えきれなかったようです。

──その背景には何があるのでしょうか?

橘:これは私の新刊『無理ゲー社会』でも論じていることですが、世界で進行するリベラル化の根底には、「すべてのひとが自分らしく生きられる」社会をつくるべきだという価値観があります。当然のことながら、「わたしが自由に生きる」なら「あなたも自由に生きられる」権利を保証しなければならない。この相互性・普遍性がリベラリズムの基礎で、現代社会では、人種や民族、性別、国籍、身分、性的指向といった自分では変えられない属性による差別はどんな理由があっても許されなくなりました。これが「政治的な正しさpolitical correctness」で、PCとかポリコレと呼ばれます。

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト