スポーツ

57年前の「東京オリンピック1964」はどんな批判を受けていたか

1964年、東京五輪。94か国が参加した前回東京大会の開会式。前日までの雨があがり抜けるような青空のもと、日の丸カラーの355人が入場行進した(写真/共同通信社)

1964年、東京五輪。94か国が参加した前回東京大会の開会式。前日までの雨があがり抜けるような青空のもと、日の丸カラーの355人が入場行進した(写真/共同通信社)

 テクノロジーがどんなに発達した世の中になろうとも、歴史から学べることは多い。コラムニストの石原壮一郎氏がレポートする。

 * * *
 国内外から複雑な視線を集めつつ、ひと味違うオリンピックが行なわれています。もちろん、選手のみなさんや現場の関係者のみなさんには、心からの敬意と拍手を送りたいところ。ただ、ピュアな気持ちで観戦を楽しみ、無邪気に声援を送るのは容易ではありません。開幕後も政府や主催者側への批判や疑問の声が、次々と巻き起こっています。

 ご存じのとおり57年前の1964(昭和39)年にも、東京でオリンピック・パラリンピックが行われました。当時の日本は敗戦のどん底から奇跡的に立ち直って、高度経済成長の真っただ中。そんな中で開催されたアジア初のオリンピックに、国民は大きな誇りを感じ、全力で声援を送りました。今回とはかなり様相が違います。

 しかし、どんなときにも何に対しても「批判の声」を上げたくなるのが、人間のサガでありメディアの業。1964年10月の新聞(朝日新聞、毎日新聞)をめくって「東京オリンピック1964」に対する批判を探してみました。

 開催前に投書欄で散見されたのが、聖火リレーに対する疑問の声。「騒ぎすぎる聖火リレー」(朝日新聞1964年10月6日付)と題された投書では、宮城県の医師(52)が聖火リレーの交通規制で1時間半も車が動けず急用に間に合わなかったと書きつつ、「この火のために日本全国が公的・私的に費やす時間と金がもったいなくてならない」「聖火リレーは開催地東京だけですまさるべきものだったように思う」と怒っています。

 10日の開会式当日の毎日新聞は、いつもは中面にある社説を1面に持ってきて「オリンピック精神に帰れ」と訴えました。「オリンピックを政治の攻勢から守る」ためのひとつの方法として「表彰式における国旗と国歌をやめてはどうか」と提案しています。「オリンピックがかかえるもう一つの課題は、いよいよ危機にひんしつつあるアマチュアリズムをどう守るか、ということである」とも。政治との関係とアマチュアリズムをめぐる問題は、その後も解消されるどころか、どんどんうやむやにされています。

 開会式は、ほぼ絶賛でした。朝日新聞10日付の夕刊には「満場割れよと拍手」といった見出しが躍ります。同紙は同じ日に、開会式を観戦した作曲家の芥川也寸志、画家の生沢朗、映画監督の堀川弘通の座談会を掲載。ブラスバンドの演奏に対して芥川氏が「軍隊調が過剰」と苦言を呈するなどちょっとした批判はありましたが、3人の結論としては「まず上出来の成績」と評しています。

関連記事

トピックス

2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
【追悼】釜本邦茂さんが語っていた“母への感謝” 「陸上の五輪候補選手だった母がサッカーを続けさせてくれた」
週刊ポスト
有田哲平がMCを務める『世界で一番怖い答え』(番組公式HPより)
《昭和には“夏の風物詩”》令和の今、テレビで“怖い話”が再燃する背景 ネットの怪談ブームが追い風か 
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
広島・広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《過激すぎる》イギリス公共放送が制作した金髪美女インフルエンサー(26)の密着番組、スポンサーが異例の抗議「自社製品と関連づけられたくない」 
NEWSポストセブン
1990年代、多くの人気バラエティ番組で活躍していたタレント・大東めぐみさん
《交通事故で骨折と顔の左側の歯が挫滅》重傷負ったタレントの大東めぐみ「レギュラーやCM失い仕事ほぼゼロに」後遺症で15年間運転できず
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト
1990年代、多くの人気バラエティ番組で活躍していたタレント・大東めぐみさん
《事務所が猛反対もプロ野球選手と電撃結婚》元バラドルの大東めぐみ、人気絶頂で東京から大阪へ移住した理由「『最近はテレビに出ないね』とよく言われるのですが…全然平気」
NEWSポストセブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《借金で10年間消息不明の息子も》ビッグダディが明かす“4男5女と三つ子”の子供たちの現在「メイドカフェ店員」「コンビニ店長」「3児の母」番組終了から12年
NEWSポストセブン