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故・坂本九さん生誕80年、妻・柏木由紀子さんの背中を押した竹内まりやの言葉

出会った時、柏木さんは新人女優。坂本九さんは『上を向いて歩こう』がアメリカでも『SUKIYAKI』として大ヒット、世界的な人気だった。

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 東京オリンピックの閉会式(8月8日)では、世界的に親しまれた坂本九さんの「上を向いて歩こう」の歌声が会場に流れ、多くの人を感動させた。

 1985年8月12日に起こった日本航空123便(ジャンボ機)の墜落事故。犠牲となった520名の中には歌手の坂本九さんもいた。人なつっこい笑顔と心に響く歌に誰もが惹かれた九さんの死を、日本中が悲しんだ。

「当時は、もう二度と笑える日が来ることはないと思っていました。それでも今、こうやって笑顔で過ごせるようになりました」

 そう話すのは、幸せな日々から突然、最愛の夫を失ってしまった女優の柏木由紀子さん。36年前の「あの日」から、それでも歩き続けた現在の日々を語る。

* * *

「あの日のことは今でも鮮明に覚えています。私は38才で娘の花子と舞子もまだ小学生。NHKでの収録の後、夕方に羽田から伊丹へ向かう予定の主人を朝10時に見送って、娘達と3人で買い物に出かけました。自宅に戻ると、主人が一旦帰宅した形跡がありました。お蕎麦の出前をとって運転手さんと食べてから空港に向かったようでした」(以下、カッコ内、柏木さん)

 夕方、柏木さんと娘さん3人でお風呂に入り、先に出た花子ちゃんがたまたまついていたテレビのニュースを見た。そして『パパ、何時の飛行機に乗った?』と血相を変えて飛んできた。レーダーから日本航空の飛行機が消えたというニュースを知り、いつもは全日空だから大丈夫と一瞬思ったが、その日は満席で日本航空になったということを思い出した柏木さんの全身を強い震えが襲った――。

 そして事故から4日後、群馬県御巣鷹山近くの遺体安置所で、柏木さんは変わり果てた夫の姿と対面する。九さんがいつもつけていたペンダントは墜落の衝撃で鎖が引きちぎられ、四角いペンダントの部分は折れ曲がって胸に突き刺さっていた。

「棺の横で一生分の涙を流しました。結婚してからそれまでずっと、主人がすべてフォローしてくれていたので、私はうまく答えられなくても主人の隣でにこにこ笑っていればよかった。彼なしでは生きていけない、もうこの先どうしていけばいいのか、全くわかりませんでした」

 九さんと柏木さんが出会ったのは、九さんが28才、柏木さんが22才のころ。

「最初は、いろんなことを教えてくれるお兄さんのような存在で、憧れを抱いていました。私はドラマの主演が決まったり女優の仕事がうまく進み始めた時期で、結婚は考えていなかったのですが、彼と一緒にいると楽しくて。しだいに『結婚しなくちゃ、この人とこれからもずっと一緒にいられない』と思うようになったんです」

1971年に笠間稲荷神社で結婚式、高輪プリンスホテルでお披露目パーティーが行われた。

1971年に笠間稲荷神社で結婚式、高輪プリンスホテルでお披露目パーティーが行われた。

 それから女優の仕事はセーブし、1971年に結婚。九さんは、ゴルフやテニスといったスポーツや出かけるのも『一緒に行こう、その方が楽しいよ』と柏木さんを誘ってくれるので、仕事以外はほとんどいつも一緒。1973年に花子さん、1976年に舞子さんが生まれ、それは楽しく幸せな日々だった。

1973年に長女の花子さん、3年後に次女の舞子さんが生まれ、4人家族に。

1973年に長女の花子さん、3年後に次女の舞子さんが生まれ、4人家族に。

「“イクメン”なんて言葉はまだない時代だったけれど、すごく子煩悩で、おむつを替えたり次の日朝早くから仕事でも夜中に寝かしつけてくれたりしました。ちょっとしたケンカは普通にしていましたよ。私も若かったから、帰りが遅いと『どこへ行ってたの?』なんて聞いてしまうとか。お互いしばらく話さないなんてこともあったけど、よい思い出しか残っていないんです。だから講演で話をするとよい人すぎるみたいな感じになってしまう(笑い)」

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