海外では、コストのかかる手術を経済的な理由で受けられない場合があることはすでに論じた。だが、それだけでなく、医師と患者が納得して治療法を決めていることも、放射線治療と手術の割合が拮抗していることに関係すると考えられる。室井さんが言う。

「医師側から患者に病状や治療法を説明する“インフォームドコンセント”ではなく、医師が患者の治療選択を助ける形での意思決定が大事。残念ながら、日本ではアメリカのような“患者による意思決定”ができておらず、手術が選ばれている一面があることは事実です。さらにいうと、日本は国民皆保険なので、医師が患者に説明したからといって医師の収入につながらないという問題もある。

 日本人は“タダ”や“お得”を好む国民ですが、本来、命を左右する医療に関してまでお得さを求めるのは、おかしな話です」

 武田さんも、患者側の問題をこう指摘する。

「最近は、医師と協力して話し合いをした上で決めたいとか、個人的にインターネットなどで情報収集をして意思決定するなどのケースも増えてきていますが、圧倒的に多いのは『治療法は医師に決めてほしい』という、旧来の医師と患者の関係を求める人たちです」

 医師任せにすると、何か問題が起きた場合、後悔や恨みが残ることが多い。とはいえ、自分で選択するとなると、迷いが生じることもある。

「最近は病院にセカンドオピニオンの窓口が準備されていることも多い。治療法を迷った場合、腫瘍内科医などに意見を聞くのもひとつの案です」(室井さん)

 生き方が多様化する現代では、「どう生きたいか」を優先し、自ら治療法を選ぶことも一考すべき時期に来ているといえる。

※女性セブン2021年8月19・26日号

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