加藤勝信・官房長官(時事通信フォト)

加藤勝信官房長官もバッハ会長の銀座散策を問題視しなかった(写真/時事通信フォト)

 しかし、そんな感覚など丸川五輪相には無いらしい。バッハ会長の行動に対する見解は違っていた。ネット上で反発が強まると、10日の会見で「14日間しっかりと防疫措置の中で過ごしていただいているというのが重要なポイント」と述べ、「不要不急であるかということは、本人が判断すべきものであります」と、その責任を個人の判断に任せたのだ。

 バブル方式の穴が指摘された時、丸川五輪相はルール違反をした者に対し、大会の参加資格証のはく奪など厳格な処分を求めていた。しかし、大会が始まり違反が散見されると、記者会見で「具体的な内容は組織委に聞いてほしい」と述べただけだ。強気の姿勢はどこ吹く風でIOCや組織委任せ。五輪相として彼女が守っているもの、守るべきものは何なのか分からなくなる。言動が矛盾しようと「この場を上手く切り抜ければいい」、そんな感じすら受けてしまうのだ。

 銀ブラ問題の一件も同じだ。相手任せは黙認することに他ならない。その時、その場の都合や成り行きで態度や言動を変える「ご都合主義」としか言いようがない。これは丸川五輪相に限ったことではなく、前述したように加藤官房長官もバッハ会長の銀ブラを問題視しなかった。

 国民より各国要人が重要なのか。それとも自分たちの目的を遂行するためか、自らが関与する政権や組織を守るためか、政権の中にもご都合主義がまかり通っていることを、丸川五輪相は再認識させるきっかけを与えてくれた。

 さらに、12日にはバッハ会長に関する問題がもう1つ浮上した。大会前、広島訪問した際の警備費を広島県や市がIOCや組織委に求めたが負担されず、県と市が全額を折半するというのだ。丸川五輪相や加藤官房長官の発言に沿えば、これも個人の判断に任せた訪問ということなのだろうが、おかしな話だ。

 東京五輪は終わったが、24日からはパラリンピックが始まる。また丸川五輪相が注目される機会がないことを願う。

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