ライフ

増上寺・宝物展示室【2】家康の書状に壇蜜「ホッとします」

『観智国師 源誉存応肖像』 家康が江戸城へ入府した天正18年頃より交流が始まったとされる

『観智国師 源誉存応肖像』 家康が江戸城へ入府した天正18年頃より交流が始まったとされる

 日本美術応援団団長で美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・港区の増上寺・宝物展示室の第2回。増上寺が徳川家康の菩提寺になった理由や家康の手厚い庇護について語り、その過程で残された物を巡る。

山下:徳川将軍家の菩提寺・増上寺は徳川家康没後400年となる平成27年に宝物展示室を開設。菩提寺となるきっかけとなったのが、『観智国師 源誉存応肖像』に描かれた人物です。

壇蜜:存応上人が家康公の帰依を受けたのですね。

山下:増上寺はもともと江戸城西側の江戸貝塚(現・千代田区平河町~麹町付近)に創建されましたが、菩提寺となったことから慶長3年に現在地の港区芝へ移転しました。この地は江戸城の南西側、裏鬼門にあたります。江戸城北東側の鬼門にあたるのが上野の寛永寺。寛永寺と増上寺が幕府を護っていたのです。ちなみに寛永寺を上へ辿ると日光東照宮があります。

壇蜜:家康公のお墓は日光東照宮にありますね。

山下:葬儀は元和2年に増上寺で行なわれました。家康公は増上寺を手厚く庇護して大伽藍を建立したほか、その生涯を通して存応上人と交流を深めたのです。それを示す史料のひとつが『徳川家康書状』。家康公が増上寺へ出陣見舞いの礼を綴った、私的な書状です。公的な書状でないため年号はありませんが、9月に帰陣の見通しがついているところから、おそらく天正19年の奥羽出陣の際のものと推測されます。

壇蜜:しっかり家康と署名があります。かろうじて家康だけ読めるあたり、尊い天下人もそれほど達筆ではなかったのかもと想像するとなんだかホッとします。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)

●増上寺・宝物展示室
【開館時間】10時~16時(最終入館15時45分)※当面の間、平日は11時~15時閉館(最終入館14時45分)
【休館日】火曜(祝日の場合は開館)
【入館料】700円 ※徳川将軍家墓所拝観共通券1000円
【住所】東京都港区芝公園4-7-35

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年8月27日・9月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

裁判は全面対決に発展(ZUMApress_AFLO)
水原一平被告が裁判で繰り返した「裏付けのない主張」と「暴露」…“厳罰を望む”大谷翔平の言動からにじみ出る静かなる怒り
女性セブン
大木容疑者(共同通信)。頭部が遺棄された廃マンション
《東大阪・バラバラ遺体事件》「部屋前のインターホンが深夜に鳴った。それも何度も」女性住民が語った“恐怖のピンポン”「住民を無差別に狙っていたのか…」
NEWSポストセブン
車に乗り込む織田裕二(2025年1月)
《フジテレビ騒動の影響》織田裕二主演映画『踊る捜査線 N.E.W.』、主要キャストに出演を打診できないままピンチの状態 深津絵里の出演はあるのか
女性セブン
閑散とした場所に喫煙所(城北公園)
【万博まで約2か月・現地ルポ】路上喫煙禁止条例施行の大阪市「喫煙可能な場所を300か所確保」方針で大騒動 「本当にここに必要か?」「鍵が開かない」…問題が続々噴出
週刊ポスト
『東京2025世界陸上』のスペシャルアンバサダーを務める織田裕二
「くすぶって終わりたくない…」 織田裕二がバラエティ出演を辞さなくなった切実な背景《『世界陸上』に緊急復帰の理由》
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「従業員の人が驚くといけないから…」田村瑠奈被告が母・浩子被告に告げた「殺害現場のホテルをキレイにした理由」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「1000人以上の男性と関係を持った」金髪美人インフルエンサー(25)が“乱倫パーティー動画”削除の大ピンチ《世界に波及する“奔放な女”の影響力》
NEWSポストセブン
浩子被告の主張は
「すごい、画期的だ…」娘・田村瑠奈被告と被害男性の“初夜”の日、母・浩子被告が夫に送っていた「驚嘆LINE」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
怒り心頭のマツコ
《所属事務所社長の失踪で“消えた大金”》マツコ・デラックス“年収7億円”“20億円”説に「本当の金額はかけ離れている」と猛反論 
女性セブン
新証拠が明らかに(左は共同通信)
「深夜3時に猛ダッシュ」大木滉斗容疑者(28)の“不可解な奇行”を捉えた新証拠とエリート大学生時代の“意外なエピソード”《東大阪バラバラ遺棄》
NEWSポストセブン
ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《過激ファッション》カニエ・ウェストの17歳年下妻、丸出しドレスで『グラミー賞』授賞式に予告なく登場「公然わいせつ」「レッドカーペットから追放すべき」と炎上
NEWSポストセブン
“既婚者のための新しい第3の場所”ここにあります
《家庭・職場だけではない“既婚者のための新しい第3の場所”を》会員数50万人突破!カドル(Cuddle)-既婚者マッチングアプリが提案する新たな出会いの形
NEWSポストセブン