大魔神といえば、はにわのような無表情から悪に対する怒り顔に変化する瞬間がみどころのひとつ。だが、よくみるとこの映画には、忠文らを救出にきた花房家の残党を、左馬之助らが残酷に鉄砲や槍で平然と射殺するなどシビアな場面も多い。こども向けの明るい特撮映画とは一味違うのである。勝新太郎の『座頭市』など数多くの名作時代劇を生み出した大映京都のスタッフによる精巧なセット(瓦まで魔人の縮尺に合わせて作られた)とブルーバックなど精密な技術を駆使し、“日本初の本格的特撮時代劇”と今も称えられる『大魔神』は「大魔神怒る」「大魔神逆襲」と三部作になった。
当時の撮影所があった京都太秦「大映通」のスーパー前には、大きな大魔神像がある。今回の新作PRでも、9.8メートルのバルーン大魔神が登場し、話題になった。これを機に大魔神ブームが起きないか。私は密かに期待しているのである。