2020年12月2日に発売されたデビューシングル「Step and a step」のジャケット
デビュー時からレベルの高さが必須
BE:FIRSTやNiziUのように、オーディション番組から誕生したグループには、「『絶対的エース(センター)』が生まれづらく、必然的に『全員エース(センター)』になりやすい」という傾向があります。
持って生まれた才能、これまでの経歴、培ってきたスキル、それぞれの環境で育まれた人間性、同じ夢を追う者同士の絆などが視聴者にも共有され、「推しはいるけど、全員素晴らしい」というムードが生まれやすいのがオーディション番組の特徴。彼らをプロデュースする側も、それぞれの個性や長所を生かした楽曲とダンス、プロモーションを用意して、「全員エース(センター)」という印象につなげています。
そしてもう1つ象徴的な変化は、グループアーティストの技術的なレベルアップ。もともと日本人のグループアーティストには、「未熟な段階から成長を重ねていく姿もエンタメとして楽しんでもらう」という戦略があり、デビュー時点におけるハイレベルなパフォーマンスは求められてきませんでした。
また、見た目に個人の好みがある一方、スキルの評価は一致しやすいため、技術的には「誰かが凄い」より「全員凄い」のほうがハードルは高いとされています。しかし、BE:FIRSTやNiziUはオーディションの段階からハイレベルを求められていました。どちらもオーディションを重ねることでスキルアップさせ、「全員エース(センター)」のグループを実現させるという戦略を採用していたのです。
他のグループでは、ジャニーズも楽曲のパフォーマンスこそエース(センター)を感じさせるものの、その他の活動では「全員エース(センター)」を思わせる戦略が増えてきました。たとえば、バラエティ出演時や写真撮影時などの立ち位置もあえて固定せず、意図的に変えることも多くなっています。
最近ではメディアが「エース(センター)」というフレーズを強引に使って盛り上げようとし、それに「一部のファンが反応しているだけ」という感も否めません。その意味ではメディアが意識を変えていく時期に入っているのではないでしょうか。
ともあれ、この秋から年末にかけて各局の大型音楽特番が予定されているだけに、まだまだ「全員エース(センター)」のグループアーティストがメディアを席巻するでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。