ところが、河野氏は政権公約本の出版直前になって出馬をためらいだした。
「まず私のいまの仕事をしっかりやりたい」「総裁選うんぬんより、まずワクチン接種と規制改革を進める」
8月20日の会見で総裁選出馬について質問されると、そう慎重な言い方をしたのだ。何があったのか。実は、会見の2日前、河野氏が派閥の親分である麻生太郎・副総理と極秘会談したという情報が流れている。官邸関係者が語る。
「会談は8月18日の日中に行なわれたようだ。河野さんは麻生さんに著書の出版について報告をしたが、麻生さんが何を語ったのかはまだ把握できていない」
麻生事務所は「公表している以外のスケジュールについてはお答えしていません」と回答したが、河野事務所にぶつけると、「(会談は)事務所では把握していません。日程表の予定にもないし、大臣室の日程担当も『知らない』と言っています」と否定的な回答だった。
それでも自民党内で会談説が注目されているのは、ちょうど1年前に似た状況があったからだ。河野氏は昨年8月、安倍晋三・前首相の突然の退陣表明を受けた総裁選への出馬に動いていた。そのとき、麻生氏との会談(昨年8月31日)が持たれてこう説得されたとされる。
「おまえの父親は首相になれなかった総裁だ。オレも首相は1年で終わった。焦らないほうがいい。必ず良い機会は来る」
結局、河野氏は出馬を断念し、菅支持に回って入閣した。派閥会長を続けたいという麻生氏は、今回も河野氏の出馬に反対とされる。党内では河野氏が会見で慎重な言い方をしたのは、「麻生氏に出馬を止められたのではないか」との見方が消えない。
※週刊ポスト2021年9月10日号