ライフ

孤独の正体 現代社会において必然的に「友だちがいなくなる」構図

現代社会において「孤独」が生まれる背景とは?(イメージ)

現代社会において「孤独」が生まれる背景とは?(イメージ)

 コロナ禍で孤独や孤立の問題が深刻化しているとして、政府は内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を設置するなど、孤独が大きな社会問題となっている。その背景にあるのは、わたしたちの「つながり」の変化ではないか、というのは最新刊『無理ゲー社会』で、リベラル化する社会での「生きづらさ」の正体を解き明かした作家・橘玲氏だ。橘は「現代社会で起きているのは、愛情空間の肥大化と友情空間の縮小、それにともなう貨幣空間の拡大」と分析する。

 * * *
 社会調査では、ネームジェネレーターという手法でひとびとの「つながり」を計測している。一般的なのは「あなたが重要なことを話したり、悩みを相談するひと」を挙げてもらう手法で、アメリカでは1985年から2004年の20年間で「重要なことを話す」親友の数が平均して3人から2人に減少し、ゼロという回答が8%から23%に上昇した。アメリカ人のほぼ4人に1人は親友がいない(*)。

【*参考:Miller McPherson, Lynn Smith-Lovin and Matthew E. Brashears (2006) Social Isolation in America: Changes in Core Discussion Networks over Two Decades, American Sociological Review】

 世界価値観調査では、「あなたには、日頃から親しく付き合っている方が何人くらいいますか。ただし、同居のご家族やこの1年間で一度も連絡を取り合っていない人は除いてお答えください」という質問で日本社会の「つながり」を調べているが、2005年から10年にかけての5年間で、「21人以上」と親しくつき合っているという最大カテゴリが15%から8%に減る一方で、誰とも親しくつき合っていないという回答は4%から7%に上昇した(*)。

【*参考:池田謙一編著『日本人の考え方 世界の人の考え方 世界価値観調査から見えるもの』勁草書房】

 2021年版(コロナ後)の高齢社会白書によれば、60歳以上で「家族以外の親しい友人がいない」と答えた割合は31.3%とほぼ3人に1人だった。この割合はアメリカ14.2%、ドイツ13.5%、スウェーデン9.9%よりはるかに高く、「孤独死」が日本で大きな社会問題になる理由がわかる。

 それ以外でも、統計数理研究所による「日本人の国民性調査」では、「あなたにとって一番大切と思うものはなんですか」の質問に「家族」という回答が2008年にこれまでで最高の45%に達し(2013年は44%)、それと同時に、家族以外のひとと日常的に親しくつき合う傾向が低下している。

 NHK放送文化研究所による「日本人の意識」調査でも、「なにかにつけ相談したり、たすけ合えるようなつきあい」を近隣のひとに求める割合は、1973年の35%から2018年には19%まで減っている。

 このように、「リベラル化」する現代社会においてわたしたちはより「孤独」になっている。コロナ禍で孤独や孤立の問題が深刻化しているとして、政府は内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を設置したが、その背景にはこうした状況があるのだろう。

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン