芸能

脚本家が語る千葉真一さんの凄さ「ガチンコ感が突き抜けていた」

千葉真一さんの“本気”は凄まじかったという(時事通信フォト)

千葉真一さんの“本気”は凄まじかったという(時事通信フォト)

 アクション俳優のトップスター、千葉真一さんが逝去した(享年82)。彼の姿は、なぜこんなにも観客の心を鷲づかみにしたのか。出世作『激突! 殺人拳』(1974年)にまつわる秘話を、脚本家・高田宏治氏が明かした。

 * * *
 千葉の代表作というと『仁義なき戦い』をはじめとする実録モノを挙げる人が多いけど、僕の中では『殺人拳』シリーズなんです。今でもあの作品は、千葉のための、千葉にしかできない映画だったと思っています。

〈高田宏治氏が脚本を書いた映画『激突! 殺人拳』(1974年)は、千葉のアクション俳優としての才能が遺憾なく発揮された傑作として名高い。裏稼業のプロにして空手の達人。そんな千葉が、鍛え上げた肉体を武器に敵をなぎ倒していく。同シリーズは海外でも人気を博し、千葉が「サニー・チバ」として世界的な知名度を獲得するきっかけとなった〉

 元々は東映の岡田茂社長(当時)がブルース・リーの映画を見て触発されてスタートした企画でした。空手や武道の形だけの所作じゃない、本当の“実技”ができるということで千葉に白羽の矢が立った。アメリカ映画とは違う、泥臭いアクションというのかな。娯楽映画中心の東映の中では驚くほどハードボイルドで、千葉という素材が作品に完璧にハマった。一緒に仕事をした作品はたくさんあるけど、一番印象に残っている。

 その理由はいくつかあるんですが、ひとつは千葉のアクションに“血の滾(たぎ)り”があったこと。相手を本気で殴って、本気で殺してやろうというガチンコ感が突き抜けていた。例えば千葉が設立したJAC(ジャパンアクションクラブ)の教え子の真田広之にしたって、純粋なアクションではなくて、その中に“芸”が入っているでしょう。でも『殺人拳』シリーズの千葉は全シーン真剣勝負で臨んでいた。イマドキの生っちょろい俳優にはとても真似できませんよ。

 撮影中は本人も役に入り込んでいたから大変だった。急に「エキストラ100人集めてくれ」とか無理なアイデアがどんどん出てきて、言い出したら聞かないから、スタッフは困っちゃってさ。言う通りにしていたら制作費がパンクしそうになって、えらいことになった。商売のことなんか一切忖度しない、役者バカの典型でした。

 そうして作った『殺人拳』シリーズは、海外でもウケました。これは空手という武道の存在も大きかった。ブルース・リーはヌンチャクを持つけど、空手は武器を持たずに戦う「徒手空拳」が基本。これが新鮮だったんでしょう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト