喫煙者は35%も低下(写真/PIXTA)

喫煙者は35%も低下(写真/PIXTA)

「人間は加齢とともにさまざまな生体機能が低下します。たとえば血液をつくる骨髄の能力が落ちて、外敵と闘うための白血球が生み出しづらくなる。加齢によって生命を維持するしくみがうまく働かず免疫機能が低下するため、ワクチン接種でできた抗体価が持続しないのです。そうした作用のため、個人差はありますが、年齢が高くなるほどワクチンの効き目が薄れていきます」

 ちなみにファイザー製とモデルナ製は同じmRNAワクチンであり、接種後の抗体価の変化は同様の傾向を示すとされる。

 愛煙家には耳が痛いデータもある。宇都宮病院研究チームの調査では、たばこを吸う人は吸ってない人と比べて、抗体価が35%低かった。

 医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが指摘する。

「喫煙はあらゆる病気のリスクファクター(危険因子)で、がんを招くことなどが知られています。要はたばこを吸うと細胞が劣化しやすくなるので、免疫機能も低下してワクチン効果を維持できないと考えられます」

 肥満にも注意したい。

「海外の論文では、肥満がワクチンの効果を減らす要因として指摘されています。体重が増えるほどワクチンによる抗体価が抑えられて、生体の免疫反応が起こりにくくなると考えられます」(岡田さん)

 喫煙、肥満と並ぶ生活習慣病の危険因子である飲酒にも気をつけたい。

 千葉大学医学部附属病院がファイザー製ワクチンを接種した職員1774人の抗体を調べたところ、毎日お酒を飲む人はそうでない人に比べて抗体の総量が約20%少なかった。

 一方で週2~3回程度の飲酒であれば、まったく飲まない人とほとんど差がなかった。

 高齢になるほど服用頻度が増える薬もワクチンの効果に影響する。

 同病院の調査では、「副腎皮質ステロイド薬」と「免疫抑制薬」を内服していた人は抗体価が上がりにくい傾向だった。太融寺町谷口医院院長・谷口恭さんの指摘。

「ステロイドや免疫抑制薬は免疫機能を抑えて異物に反応する力を弱くするので、ワクチンが効きにくくなります。千葉大学病院の調査項目にはありませんが、抗がん剤もステロイドや免疫抑制薬と同様にワクチンの効果を下げると考えられます」

 ワクチンの効果は性別でも異なる。千葉大学医学部附属病院の調査では男性より女性の方が、抗体価が上がりやすい傾向があった。その理由を谷口さんは「進化の過程で、女性は異物に反応する力を強めたのでは」と指摘する。

「男女の出生比率は105対100で、男性の方が多く生まれます。一方で古来多くの人間の生命を奪ってきた感染症から、ただでさえ少ない自分たちを守るため、女性は異物に反応する力(免疫力)を養ってきたと考えられます。

 そのため男女が同じようにコロナに感染しても、女性の方が抗体を形成する力が強くなります。しかし、その半面、膠原病など過剰に免疫が働く『自己免疫疾患』は圧倒的に女性が多い」

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