『ほん怖』はさらに遅い10月の放送
番組内容に目を向けてみても、前述した3つの夏特番は、「芸能人たちがつかの間の夏休みを楽しみ、終わりを惜しむ」「学生たちが青春の終わりを惜しむ」というムードの演出が見られます。
収録そのものは7~8月に行われ、芸能人や学生たち本人にとっての夏はそこで終わり、寂しげな表情を見せますが、そのとき視聴者はまだ夏真っ盛りの状態。そんなギャップを埋めるために、「視聴者にとっての夏が終わったばかりの9月に放送されている」という点もあるようです。
また、民放のあるバラエティスタッフに聞いた話では、「外出が多い8月は見てもらいづらいから、人の動きが落ち着いた9月のほうがいい」「かつてはみんなお盆の時期に休んでいたが、最近は会社の夏休みが分散している」と言っていました。お盆より遅い時期に夏休みを取る人が増え、気候的にも残暑の期間が長くなるなど、「夏という季節の期間が延びている」という感覚があるようなのです。
最後にもう1つ、“夏特番”のイメージが強い番組をあげておきましょう。その番組は『ほんとにあった怖い話』(フジテレビ系)。この番組は1999年から2018年までの大半で8月に放送されていましたが、2019年と2020年は10月に移動しました。
「今年も10月に放送されるだろう」と言われていますが、同番組のホームページにあるメッセージ欄には、「これが無いと、夏締めくくれません!」「夏放送お願いします」「今年はまだやらないのかな」「毎回、観終わると夏も終わったなぁ…と思うのです」「暑いうちに涼しくしてください!!」などと放送を待ちきれない人々の声が書き込まれています。
前述したさまざまな理由こそあれ、待っている視聴者は多いだけに、3番組のように遅くとも9月上旬には放送したほうがファンを喜ばせられるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。