「会社で役職がついていたり、大学で先生だったり、立派な肩書を背負っていた人は、定年後もそのときの感覚がなかなか抜けません。自分が単なる『いち老人』になったことに気づかず、若い店員などに対して、まるで自分の部下のように接してしまうのです」(林氏)
しかし、その横柄な態度の裏には、孤独感もあるのかもしれない。
「現役時代と違って世間から認めてもらっていない孤独感が募ると、若い店員の何気ない言動が自分を馬鹿にしているように感じてしまいます。とくに上の世代の男性は、『弱音を吐いてはいけない』という教育を受けてきました。そのため、周囲に助けを求めることが苦手な傾向があります。
『わからない、できない自分』を認めたくないので、自分の非を認めて謝ることができない。加齢による能力の低下を本当は自覚しているものの、気持ちの上では受け入れられない。そういった葛藤を怒りの感情でアウトプットしてしまうのが、不機嫌な老人たちの実情ではないでしょうか」(林氏)
不機嫌な老人の胸の内には、老いの不安や孤独が渦巻いている……。そう考えると、彼らへの周囲の対応も少し工夫ができるかもしれない。
◆取材・文/原田イチボ(HEW)