「自撮りの神」とも讃えられる池田エライザ
まるで美しい人形のように固まっている古見さんの内面が少しずつ動き出すシーンもいい。延々としゃべらずに物語が進んでいくのも奇妙といえば奇妙で、黒板に書いた文字を追うシーンが何分間も続く。でも、なんだかわかる気がするのです。人が打ち解ける瞬間は、何気ない言葉から始まり、固い氷が溶けていく。すこしずつ古見さんの心の内側が見えてきてふわっとした温かさに包まれる。「コミュ症」という難役を演じる池田さんが、もう彼女以外にこの役はできないのでは、と思わせてくれるほどハマッています。
池田さんそのマルチな才能はモデル、女優、音楽番組サブMC、映画監督、歌手と広がりを見せていますが、フィリピン人の母親と日本人の父親を持つハーフで幼少期は「野山をかけまわる野生児だった」とか。中学時代にはひどいイジメに遭い、モデルに応募して選ばれ「下克上を果たした」と語るド根性ぶり。いくつもの壁を乗り越えてきた強さが感じられる。
そもそもスタートがモデルだけあって自己演出も上手。かつては「エライザポーズ」「自撮りの神」と讃えられるほど女子高生憧れの存在で「可愛く見られたいのであれば上から、大人っぽく見られたいのであれば下から、思いを伝えたい時は真正面」と自撮りについて語るように自己プロデュース力がある。池田さんは見るたびにクルクルと印象を変えていく人ですが、それも自己プロデュース力と無関係ではないでしょう。
「彼女自身トライアンドエラーを繰り返して多くのことを学んでいますから、そこに僕らは必死に追いついていくだけ」(「オリコンニュース」2020年12月3日)と所属事務所の中田しげる社長も彼女の突破力を追いかけているもよう。容姿は人形のように整っているけれど媚びず堂々と我が道を貫くスタイルは、今ドキの女子たちの夢を具現化している、とも言われます。
これまで池田さんの人生のトライアンドエラーの中には、きっとコミュニケーションのつまづきや挫折もあったはず。このドラマの中にいかに燃料として投入していくのか。今後の展開が楽しみです。