日本人に足りないといわれる水溶性食物繊維はビフィズス菌のえさとなるオリゴ糖をたっぷり含んでいる(写真/Getty Images)
つまり日本人は、子供も大人もビフィズス菌を意識することが健康的な腸内フローラを維持することにつながる。そのビフィズス菌が好む“えさ”がオリゴ糖だ。
「オリゴ糖は食物繊維の仲間。ビフィズス菌が大腸でオリゴ糖をえさにして増えることがわかったのは、ここ30年の話です。
1980年代には、粉ミルク(人工乳)で育った子供は、母乳で育った子供と比べ、腸内フローラで特にビフィズス菌の割合が少ないことがわかりました。なぜかというと、人工乳はまず牛乳の成分から母乳にはない成分を取り除き、足りない成分を添加しているのですが、当時はオリゴ糖の有用性は判明していなかったので添加されていませんでした。
母乳にはオリゴ糖が豊富で、母乳で育った子供の方がビフィズス菌が多く見られました。その後、1990年代に入ると腸でビフィズス菌を増やす因子がオリゴ糖であることがわかってきました。そこで、人工乳にもオリゴ糖を添加するようになったのです」
一旦定着した腸内フローラの菌の種類を変えることは難しくても、それらの菌の比率を増やすことは大人になってからでもできる。ビフィズス菌を増やすためには、オリゴ糖を含む水溶性食物繊維を積極的に摂るといい。水溶性食物繊維はごぼうや玉ねぎ、チコリなどの野菜や、昆布などの海藻に豊富に含まれる。
「最も大事なのは食べ続けること。特定の食品に固執すると飽きてしまうので、毎回の食事で『野菜を何か食べておこう』くらいの意識で継続しましょう」
食事と同じくらい大切なのが運動だ。外出の機会が減ったコロナ禍は、腸内フローラが乱れている人が激増していることが懸念される。
「腸内フローラは毎日の積み重ねで少しずつ変化します。歩く量が1日減っただけでは影響しませんが、それが日々重なっていくことで、腸内フローラの菌種の減少につながります。逆に言うと、ほんの少しの運動を続けるだけで、腸内フローラは改善するということです」
腸内フローラは、“多様性”があるほど若々しく理想的な環境とされる。コロナ禍で老け込んだと感じている人は、腸内細菌からのSOSのサインだと受け止めよう。
※女性セブン2021年9月30日・10月7日号
水溶性食物繊維やオリゴ糖が腸に良いとされる(写真/Getty Images)