9月17日、「想像を絶するスーパーバイオレンスモンスター・パニックついに日本上陸」した。映画『食人雪男』の全国公開である。(評者・中川淳一郎=編集者)
この映画については「ヤツは顔面から喰う」「血に飢えた爆食魔獣UMA」「人間どもを引きちぎる伝説の人体破壊王降臨」などとキャッチコピーがつけられており、とんでもない残虐超獣モノ映画だと思うのだが、観終えた感想としては「すさまじいB級映画だ……」というものになってしまったのだ。
現在の中高年ならば知っている『北京原人 Who are you?』ほどではないものの、いわゆる「B級映画」として48歳の私にとっては記憶に残る名作であり、それを彷彿とさせたのである。
本作に登場する雪男は、すべての病を治すとされる「雪男草」を守る存在として描かれ、この草を奪おうとする強欲な人間同士がどのように協力したり仲間割れするか、といった心理戦も描かれており、寓話的要素もある。
恐らく監督や出演者達はごく真面目に、キチンと社会に教訓をもたらそうと思って作っていると思うのだが、私のようなB級映画好きからすると絶好の「好物が来た!」といった感覚を抱いてしまったのだ。
その感覚のズレが絶妙なる『食人雪男』という作品を「入場料分の元は取れたな」という感覚に繋がるのである。
と、ホメているんだかホメていないんだかよく分からないことをここまで書いてきたが、冒頭で述べた通り、「ヤツは顔面から喰う」など、残虐なシーン(特殊メイク)は、すさまじくリアルだし残虐に描かれている。
さらに、途中で明かされる主人公が「雪男草」をなぜ欲しがっているのか、という点については、「そりゃあ欲しくなるだろうな」という共感を得られるだろう。しかし、本作においてその主人公の欲望は、これを取られてはならないという使命を帯びた雪男には通用しない。