大型動物を対象に、半月板の断裂箇所にゲル状のシルクエラスチンを留置した後に縫合すると8週後には断裂箇所がしっかり癒合した。一方、縫合術のみでは8週後に再度断裂。この結果により、シルクエラスチンは単独でも修復に必要な細胞を引っ張り込み、保持することで再生が可能になることが確認された。
もう1つは部分切除した半月板を砕いてスポンジ状のシルクエラスチンに埋め込み、それを欠損部に移植して再生を促すものだ。大型動物に行なったシルクエラスチンスポンジの移植研究では12週後に欠損箇所が再生していた。
「現在、このように大型動物を用いた部分切除後の半月板再生研究を進めています。砕いた半月板とシルクエラスチンを使った半月板再生では切除と同じタイミングで体内に移植するため、培養の必要がなく、1回の手術で完了します。さらにシルクエラスチンは術後8週までに生体に吸収されるので、良好な半月板再生を期待できます」(安達教授)
この結果を受け、2022年度にヒトへの医師主導治験が実施される。まずは縫合術に対するゲル状シルクエラスチンの留置を行なう。症例数は5例を予定。その後、企業治験を経て、2026年の上市(臨床使用)を目指す。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2021年10月1日号