6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
6月15日、オリックス・森友哉(29)がお立ち台で涙を堪えきれなかった。「今日始球式で、大翔(ひろと)が投げたんですけど……」と声を震わせ、目頭を押さえる。
「僕たちがシーズン最後まで負けない気持ちで頑張ります。大翔も頑張ってください」
熱い思いがこみ上げ、親友・福森大翔さん(29)の名前を叫んだ。「希少がん」と闘病中の福森さんは高校野球の強豪校である大阪桐蔭高校野球部で4番打者として活躍。森は同級生で、1つ上の代には藤浪晋太郎(3Aタコマ)がいる。
この日の試合前の特別始球式に登板した福森さんは、直前に自身の高校時代についてこう語っていた。
「大阪桐蔭は世代によってそれぞれのカラーがあります。僕らの代は我が強いカラー。仲間のアウトを喜んだり、誰かが評価されたりすると不平を漏らす人がいたりだとか、それぞれが違うステージで戦いをしていた。目標は全員が日本一なんですけど、なかなか足並みは揃わない。
1つ上の代は3年生のときに春夏連覇して、1つ下の代は夏優勝しているんですよ。僕らの代は甲子園に出たもののベスト16で終えた。ベンチの選手、メンバーの中でもスタメンの選手、控えの選手と立場はさまざまですが、みんな我が強すぎて、試合というよりは自分の結果が大事と思う選手が少なくなかった。お山の大将で野球をやってきた人間が多かったんで、それを高校生なのに勘違いして自分本位になっていたんじゃないかなと、振り返るとそう思います」(福森さん。以下同)
大阪桐蔭には全国各地からトップクラスの選手が集い、年代によってはオールジャパンのようなナインが揃う。当然ながらスタメン争いも熾(し)烈だ。
「僕らが西谷(浩一・野球部監督)先生から言われたのは、『桐蔭のユニフォームを脱いで練習用の白いユニフォームを着たら、お前らは強くないぞ。歴史にのっかっているだけで強くないからもっと上を目指せ』と。そう言われても、お山の大将ばかりやったんで、みんな心の中で舌打ちですよ(笑)。
全員がイエスマンじゃなかったんで、それが弱い理由やったかもしれないです。1つ上と下はめちゃくちゃ仲が良かったんで、野球の本質はチームプレーができるかどうか。その差が如実に現れたんだと思います」