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北京で退役軍人らが再び大規模デモ 待遇改善の約束果たされず

北京で200人以上がデモ

北京で200人以上がデモ

 中国では退役軍人が除隊後、約束された就職が反故にされる他、政府の規定通りの年金や傷病手当などが支給されないといったケースが相次いでいる。政府の対応に不満を抱いた退役軍人やその家族ら200人以上が9月中旬、数日間にわたって、北京市の中国共産党中央軍事委員会の中央本部(通称、8.1大楼(ビル))に押しかけ、待遇の改善を求めて陳情を行い、一部が暴徒化して警官隊と衝突する場面もあった。この騒動で、100人以上が拘束されたという。

 中国では2015年から2018年まで、同様の騒動が相次いでおり、中央軍事委はそのつど待遇の改善を約束していた。しかし、今年も同じようなデモが起きたことから、いまだに問題は解決されていないようだ。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。

 デモに参加した退役軍人らは地方の軍事部門の対応に抗議し、国の規定通りの待遇を受けられるよう求めているが、地方政府ではらちが明かず、門前払いにされていることから、直接、北京の8.1大楼の陳情受付部門「政治信訪接待処」に集まった。

 参加者の話では、ほかにも大勢の退役軍人が北京に向かったが、途中で現地当局に連れ戻されたという。この参加者の中には、退役時に約束された就職が実現せず、住居は強制取り壊しに遭いホームレスになった男性もいたほか、ある女性は「地方の軍事部門は亡くなった退役軍人の夫の死亡一時金を『すでに給付済だ』と主張し、支給を拒否している」と訴えている。

 警察側は「10人以上集まると違法な集会にあたる」として、デモ参加者を逮捕するなどしたため、両者で衝突が起き、退役軍人らは強制的に退去させられたという。

 中国では2015年から2018年にかけて、複数の小規模な抗議運動だけでなく、1000人以上が参加する大規模な軍人デモが年数回は発生している。たとえば、2016年10月には、中国人民解放軍本部前に1000人を超す退役軍人が押しかけて抗議を行っている。

 2017年には、北京に所在する中国共産党中央規律検査委員会の庁舎近くで1000人を超える数の退役軍人が抗議運動を行った。

 2018年6月には待遇改善を要求した退役軍人を警察が殴打した事件容疑をきっかけとして4日間連続でデモが行われ、衝突が起こり、警察側は退役軍人らを逮捕した。裁判所は2019年4月、47人の退役軍人に懲役刑などの有罪判決を下している。

 退役軍人のデモのきっかけは習近平国家主席(中央軍事委主席)が2015年、当時230万人ほどいた中国人民解放軍の30万人削減計画を実行し始めてからで、その後、退役軍人の待遇改善がなされていないことが公になり、デモが広範に広がり始めた。こうしたことから、中国に5000万人超存在する退役軍人が置かれている劣悪な生活環境が問題視されている。

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