「ムーアの法則」と「シリコンサイクル」
シリコンサイクル
半導体業界には一定の“方程式”が存在する。ひとつは「ムーアの法則」。インテル創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が1965年に提唱した「半導体の集積率は18か月で2倍になる」(=高性能化)ことをいう。
もうひとつは3~4年周期で好不況を繰り返す「シリコンサイクル」。近年では、需要増と技術革新により、好況期や高値が続く「スーパーサイクル」の到来が現実味を帯びてきている。
米中対立は「戦争」である
世界的な半導体不足で危機感を募らせる米中が、巨額資金を投じての“異次元”の国家戦略に乗り出している。バイデン大統領は今年2月、サプライチェーン(供給網)を強化する大統領令に署名。一方、技術覇権争いで米国と対立する中国は中央・地方政府で計10兆円超を投資する。ファウンドリ世界最大手TSMCがある台湾での支配力を強めようとする中国に対し米国が牽制するなど、台湾を巡っての争いも熾烈を極めている。
東芝を救った伝説の天才技術者・舛岡富士雄博士
東芝を救った技術者・舛岡富士雄博士(提供/文部科学省。時事通信フォト)
デジカメやスマホなど、多くの電子機器に不可欠の半導体「フラッシュメモリ」を開発したのは、舛岡富士雄博士。東芝に在職中の23年間で約500件もの特許を出願した技術者で、1980年代に発明したフラッシュメモリもそのうちのひとつだった。
当時全盛だった「DRAM」は、電源を切るとデータが消去されるのに対し、フラッシュメモリは電源を切ってもデータが保存される画期的な優位性がある。ところが、あまりの先進性に理解されず、冷遇された舛岡博士は失意のうちに退社。その後、デジカメなどが急速に普及すると、DRAMに取って代わる東芝の基幹ビジネスに急成長した。
フラッシュメモリ事業は2018年に売却されたが、当時は経営不振にあえぐ東芝の営業利益のほとんどを稼ぎ出す救世主だった。
図版/タナカデザイン
※週刊ポスト2021年10月8日号