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このほか、感染後に職場復帰してから「コロナがうつるから近寄るな」とか、「このコロナ野郎!」などと暴言を浴びせられたというケースもあった。こうした暴言やいやがらせのケースでは、ハラスメントをする側に悪意があることは否定のしようがないだろう。
しかし、職場の上司や先輩らのなかには、職場全体の環境や会社の利益を考えた末に、過剰な行動制限を促すような言動を取ってしまうケースもあるようだ。現場をあずかる責任感のあまり、行き過ぎた規制やルールを、感染者や感染が疑われる人に課してしまうというケースだ。
そうした“責任感”がもとでハラスメントを行う本人は、された相手が傷つき、不安に苛まれていることに気づきにくい。被害を受けた側が、自分に非がないと思っている相手に対して対立姿勢に出ると、話はこじれがちだ。連合で相談を受けている久保啓子氏(フェアワーク推進センター局長)は次のように話す。
「ハラスメントは受けた人、感じた人だけの問題ではありません。職場全体の問題です。労働組合がある場合は、まず労働組合へ相談する。ない場合は会社に相談し改善を求めることが大切です。そのときは対立姿勢ではなく、より良い職場で働き続けるために改善したいという姿勢で会社に伝えることが大切です。
その上で、たとえば発熱の場合は何度以上なら職場に報告するとか、どういう状態になったら出勤してよいかといった、働く人と会社が話し合いお互いが納得できる職場のルールづくりをすることが必要です。働く環境がよくなれば働き甲斐にもつながり、辞める人も減る、それは会社にとっても利益つながることです」
明確な法律違反でないハラスメント行為は、嫌がらせやいじめを受けた本人が声を挙げないと問題化することは難しい。連合などの相談先にまずは苦しい胸の内を伝えてみてほしい。
◆取材・文/岸川貴文(フリーライター)