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中条きよし 親分役を演じてから街中で「兄貴」と声をかけられ困った

中条きよしが「やくざを演じるということ」について語る

中条きよしが「やくざを演じるということ」について語る

 日本の映画界において、いつの時代も多くの人に興奮を与えてきた“やくざ映画”。5年間に及んだ山口組と一和会の「山一抗争」をモデルとした実録映画『激動の1750日』(1990年公開)で、四代目神岡組若頭である若竹正則(中井貴一)を支える若頭補佐の成瀬勇役を演じた中条きよし。数多くのやくざ映画に出演している中条に「やくざを演じるということ」について聞いた。

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 Vシネマのやくざモノによく出ていましたけど、映画は『激動の1750日』が初めてだったと思います。山口組の宅見勝さん役でしたが、ご本人にお会いする機会があって、七三分けで銀行の部長のようでした。「これだ!」と思いました。一見優しそうな人が実はやくざだったという役作りです。本物のやくざは怒鳴り散らしたりしない。何もしなくても怖がられるので、ビビらせる必要などありませんからね。

 Vシネマの影響なのか、私を“本物”と勘違いする役者さんもいました。『新極道の妻たち 惚れたら地獄』(1994年)では安岡力也に「刺青見せてよ」と言われるし、岩下志麻さんは指を詰めるシーンの時、「どうやったらいいのかしら」と聞くんですよ。知りませんよ、そんなこと(笑)。どっちかというと、真面目なほうだと思うんだけど。

 親分役を演じてから街中で「兄貴」と声を掛けられて困りました。ある時、広島で飲み屋から出ると「ウチの親父がご挨拶したい」と呼び止められ、振り向くと三代目共政会の山田久さんでした。

 俳優を始めて数年経った頃のことですが、京都で『新・座頭市』を撮影中にケガをしてしまい、勝新太郎さんが車で病院に連れて行ってくれたんです。検査が終わると大阪に向かうので、食事でもするのかと思ったら、どこかの組事務所に入っていくじゃありませんか。驚きましたね(笑)。事務所を出るとすぐ、パトカーが追ってきました。懐中電灯で照らされて、勝さんと私だとわかったのか、「ああ、どうも。気をつけてお帰りください」って。

 やくざ役は何度も演じてきましたが、「意地と見栄は張る」という意識が常に頭にありました。自分ではよくわかりませんが、「品がある」と言ってくれる監督さんもいる。そう感じてくれて、ありがたい限りです。

【プロフィール】
中条きよし(なかじょう・きよし)/1946年3月4日生まれ、岐阜県出身。1974年、「中条きよし」としてのデビュー曲『うそ』が大ヒット。同年、『NHK紅白歌合戦』初出場。俳優としても、時代劇『必殺シリーズ』の三味線屋の勇次役などで人気を博す。

※週刊ポスト2021年10月15日号

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