2015年のドラフト会議では、1位指名した高山俊の交渉権を獲得したと勘違いし、両手を挙げて喜んだヤクルトの真中満監督(時事通信フォト)

2015年のドラフト会議では、1位指名した高山俊の交渉権を獲得したと勘違いし、両手を挙げて喜んだヤクルトの真中満監督(時事通信フォト)

「大阪出身で甲子園のヒーローでもある藤浪の獲得は阪神にとって望外の喜びだったでしょう。1位で競合の末にその年の目玉を獲得できると、興奮が収まらず『100点』を付ける人が多くなる気はします。1995年のドラフトで、7球団から指名を受けた福留孝介の交渉権を獲得し、『ヨッシャー!』と叫んだ近鉄の佐々木恭介監督も『100点』と言っています。

 しかし、福留は入団を拒否したので、実際には100点とは言えなかった。ただ、2位の岡本晃が2ケタ勝利(1997年10勝)を挙げていますし、3位の武藤孝司は2年目から4年連続100試合以上に出場してレギュラーを取っていますから、悪いドラフトではなかった」

監督は絶句。「30点」と書かれたドラフト

 斎藤佑樹、大石達也、福井優也という早稲田大学の三羽烏が注目された2011年のドラフトでは、4球団競合の末に斎藤の交渉権を得た日本ハムの梨田昌孝監督が「120点でいい」と100点を超える自己採点をしている。ただ、斎藤は故障もあって期待されたような活躍はできず、3位の乾真大、4位の榎下陽大はプロで1勝、6位の齊藤勝は0勝で現役生活に幕を閉じた。

「その代わり、2位の西川遥輝はチームの中心選手に成長しましたし、5位の谷口雄也も一時期は貴重な控えの外野として一軍に定着していた。1位指名選手が思うような成績をあげられなくても、それ以外の指名選手が予想以上に数字を残す場合もあります。2011年のロッテはその良い例ではないでしょうか」

 その年、横浜、楽天との競合の末に1位で藤岡貴裕を獲得したロッテは2位・中後悠平、3位・鈴木大地、4位・益田直也を指名し、西村徳文監督は「100点満点? そうですね」と答えていた。しかし、藤岡は1年目から3年連続6勝止まりで、その後3年間で3勝しか挙げられず、2018年のシーズン途中に日本ハムへトレードされた。3球団に指名されたドラフト1位としては期待通りの活躍とは言えず、2位の中後も1年目こそ中継ぎで2勝したが、2年目以降は伸び悩み、2015年限りでロッテを去っている。

 それでも、3位の鈴木大地は2年目にレギュラーを奪い、同年を含めて5度もフル出場。2019年末にFAで楽天に移籍したが、充分ロッテに貢献した選手だった。4位の益田は1年目から72試合に登板し、2年目は最多セーブに輝く。10年目を迎えた今年も、守護神としてチームを支え、通算155セーブを記録している(10月10日現在)。

「ドラフト終了後に70点以下で表現する監督はほとんどいませんが、1995年のドラフトで福留を外した中日の星野仙一監督は点数を聞かれ、絶句。しかも、外れ1位で指名した原俊介も巨人に抽選で敗れた。『福留がすべてや』とコメントしています。そこから推察したのか、『30点』と書いているスポーツ紙もありました。ただ、外れ外れ1位の熊本工業の荒木雅博が6年目に台頭し、2000年代の中日黄金時代を築く不動のレギュラーになっています」

 この年2位の門倉健は2年目から2年連続2ケタ勝利、6位の益田大介は一時、外野のポジションを奪いそうな勢いがあった。4位の渡辺博幸は落合博満監督時代の2004年にファーストとしてゴールデングラブ賞に輝き、リーグ優勝に貢献。タイロン・ウッズが加入した後も、守備要員として貴重な戦力だった。

「ドラフトが終わった直後は100点満点と思っても、数年後に必ずしも同じ感想を抱くとは限らない。失敗のドラフトと思っても、後で振り返れば正解に変わっていることもある。そこがプロ野球の面白さかもしれません」

 数年先、いや10年以上経たないと、ドラフト指名の本当の結果はわからない。

 

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