裏にいるのは3Aか二階か
藤井:私もやはり3Aの影響力は大きいと思いますね。経済政策でも、岸田さんはアベノミクスはおかしいと思っていたはずです。そうして金融資産課税をすると言っていたはずが、あっさり引っ込めてしまった。山崎さんが言ったように、遠慮し過ぎるんですよ。やっぱりケンカに弱いんですね。
山崎:特にキーマンは甘利さんですね。彼は麻生派に属しているが、河野太郎さんが立ったにもかかわらず岸田陣営に身を投じて総裁選で選対顧問として采配を振るった。同じ神奈川県選出で、父親である河野洋平さんには恩義があるにもかかわらず、です。
それで岸田さんは、勝利したのは甘利さんのおかげであると、非常に感謝して頼りにしている。すっかり甘利コントロール下に入ったように見えます。今度の人事もすべて甘利さんに相談した形跡がある。もちろん甘利さんの背後には、安倍・麻生の2Aがいるわけだけど、直接的には岸田さんは甘利さんのバックアップを受けた。精神的な影響力は甘利さんが一番強いんじゃないでしょうか。
藤井:甘利さんは河野洋平さんが作った新自由クラブの出身で、山崎派(現・石原派)にいたこともありましたね。
山崎:そうです。甘利さんは新自由クラブからうちに来て、独立して研究会(さいこう日本)を作って、安倍政権の実現に骨を折った。その後、山際大志郎(経済再生相)、田中和徳(幹事長代理)らを連れて麻生派に入ったことで、3Aラインができたわけです。今回は麻生派の中の甘利グループがこぞって岸田支援に動いたことで、甘利さんの子分たちも要職に就くことができた。
亀井:いやいや、3Aなどと言うがね、実際には政界一のワル、二階俊博ですよ。私は裏の事情を分かっていないわけじゃないけれど、二階が完璧に絵を描いて、動かしている。最初は、岸田と河野、どっちが強いかと見ていた。そして、どうもこれは岸田が行きそうだと思ったら、スッと行っちゃった。その裏の事情は言いませんが、それからは二階が全部仕切っているんじゃないかな。
山崎:僕は昨日(10月13日)、二階さんと酒を飲んだばっかりだけど、二階さんが最終的に岸田に行ったというのはありえない。むしろ総裁選終盤において、二階さんは最終的にどうしていいか分からないような状況に追い込まれたのではないか。二階派は草刈り場になってしまいました。
亀井:表面的にはそうかもしれないが、今、二階に睨まれたら自民党で生きていけない。それが現実ですよ。
(第2回に続く)
【プロフィール】
亀井静香(かめい・しずか)/1936年生まれ。1979年初当選。国民新党代表、運輸大臣、建設大臣、自民党政調会長などを歴任。
山崎拓(やまさき・たく)/1936年生まれ。1972年初当選。自民党幹事長、党副総裁、防衛庁長官や建設大臣などを歴任。
藤井裕久(ふじい・ひろひさ)/1932年生まれ。大蔵官僚を経て1977年初当選。大蔵大臣、財務大臣、内閣総理大臣補佐官、民主党代表代行などを歴任。
※週刊ポスト2021年11月5日号