「北朝鮮が標的にしているのは発展途上国の金融機関だけではない。すでに先進国でもセキュリティ対策が不十分な銀行が狙われている。アジアでいえば、日本、韓国、シンガポール、南米ならブラジル、エクアドル、ペルーの金融機関が標的に挙げられている」
日本のどの銀行が狙われているのか。CIA関係者はそれにはノーコメントを貫いた。代わって東京駐在経験のある米商社マンがこう推測する。
「日本の大手紙経済記者が書いた本によれば、日本のメガバンクで何度も大規模なシステム障害が起きるのは、システム改修に莫大なコストがかかるという理由から、大規模合併などに際してリテール業務に関わるシステムを刷新しないまま見切り発車し、ITがわからない経営陣が右往左往しているからだという。そんなシステムで世界有数の巨大資金を扱う銀行は北朝鮮ハッカーの格好の餌食になるんじゃないか」
米国防情報局(DIA)は10月15日、北朝鮮の軍事力に関する報告書を発表した。その中で、「北朝鮮は来年にかけて長距離ミサイル実験を行う可能性がある。兵器の能力を高めるため、さらなる地下核実験を実施しうる」と予測した。金正恩総書記はそれに先立つ10月11日の国防発展展覧会で、「敵対する勢力の卑劣な行為に断固たる姿勢で対抗する。そのためには我々はまず強くならねばならない」と檄を飛ばしている。
もちろん先立つものはカネだ。ハッカー部隊の「銀行強盗」はますます激化しそうだ。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)