ブランドの取り戻しに成功

 シャープが、米国から撤退したのは2016年。メキシコのテレビ工場を中国ハイセンスに売却するとともに米国のテレビ事業をブランドごとハイセンスに供与した。

 当時のシャープは液晶パネル事業やテレビ事業の不振で存亡の危機を迎えていた。そのためリストラに躍起になっており、米国撤退もその一環だった。そしてこの年、シャープは台湾資本の鴻海(ホンハイ)精密工業の資本を受け入れ子会社になる。

 鴻海流経営を導入したことで、シャープの業績は安定する。2017年3月期には3年ぶりに黒字となり、2016年に東証1部から東証2部に転落していたが、2017年12月には1部への復帰を果たした。それに伴い、シャープ社内では、米国再参入への夢が膨らんでいった。

2017年に東証1部復帰を果たしたシャープ(写真左は戴正呉・現会長/時事通信フォト)

2017年に東証1部復帰を果たしたシャープ(写真左は戴正呉・現会長/時事通信フォト)

 ただしそのための障害がひとつあった。前述のように、シャープは米国でのテレビ事業をブランドごとハイセンスに渡したため、そのままではAQUOSを利用することができない。そこでシャープはハイセンスとブランドを取り戻す交渉を始める。

 それが実ったのは2019年5月。シャープは次のニュースリリースは発表した。

〈シャープは Hisense International(Hong Kong)America Investment Co. Limitedと、新たな協力関係を構築することで合意いたしました〉

 この中にある「新たなる協力関係」こそが、ブランド権の取得を意味している。これで米国市場復帰への障害はなくなった。

米国市場で再び「AQUOS」のブランド価値を高められるか(写真/シャープ)

米国市場で再び「AQUOS」のブランド価値を高められるか(写真/シャープ)

プレミアムテレビで米国再参入

 さらにリリースには続けて〈この合意により、2019年後半以降、まずは米国市場におけるテレビ事業に再参入いたします〉と書かれていた。

 つまりこの時点でシャープは、1年以内での再参入を目論んでいたことがわかる。ところが、実際に販売を再開するのは来年春以降と、2年以上後ろ倒しになった。

 おそらく再参入が可能になって以降、綿密な市場調査を行った結果、当時のシャープのラインナップでは苦戦必至という結論が出たということだろう。

 日本勢が相次ぎ撤退して以来、米国テレビ市場は中韓勢が圧倒している。特にボリュームゾーンの価格帯のテレビに関しては、中韓以外のメーカーは価格面で太刀打ちできない。

 唯一、シェアトップ10以内に入っているソニーは、プレミアムテレビと言われる価格帯で勝負をしている。プレミアムテレビとは50型以上、かつネット接続のためのソフトウェアを搭載するなどの高機能が特徴だ。シャープも再参入するのにこの土俵を選んだ。

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