芸能

『カムカムエヴリバディ』が「何かが起こる」と期待させる朝ドラであるワケ

映画『トロールズ ミュージック★パワー』で声優を務めた上白石萌音

赤いワンピースが似合う上白石萌音

 ラジオ英語講座を軸に3世代にわたる女性の人生を描くNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初の3人ヒロインということでも注目を集めている。その見どころについてコラムニストのペリー荻野さんが解説する。

 * * *
 タイトルはとっても陽気だが、意外に地道でコツコツムードの『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて、三世代、100年にわたる家族の物語をラジオの英語講座をからめながら綴る。現在は、あんことお洒落が大好きな岡山の和菓子屋の娘・橘安子(上白石萌音)の日常が描かれる。

 英語講座で英語を学びはじめた安子は、初恋の相手の大学生・雉真稔(松村北斗)と心を通わせるが、稔は繊維会社の跡取り息子。二人はどうなる…という展開だ。

 このドラマで注目したいのは、藤本有紀のオリジナル脚本であること。藤本作品の魅力といえば、他のドラマにはない、耳が喜ぶ絶妙な「調べ」と目が喜ぶ奇想天外なシーンの数々。代表作のひとつ2007年の朝ドラ『ちりとてちん』は、何かと不幸な妄想をするネガティブヒロイン喜代美(貫地谷しほり)が、箸作り職人の祖父(米倉斉加年)のラジカセで落語の面白さを知り、上方の落語家になる決心をする。

 旅立ちの日、母糸子(和久井映見)が喜代美に向けて五木ひろしの『ふるさと』を大声で歌うなど、ここにもいろいろな調べが出てきたが、やっぱりすごかったのは、酒浸りで無精ひげの師匠・徒然亭草若(渡瀬恒彦)が突然、高座に上がって語りだした落語「愛宕山」。商家の旦那と幇間、芸妓たちが春の山をそぞろ歩く。「その道中の陽気なこと~!」師匠の声が今も耳に残る。 

 また、スランプに陥った近松門左衛門(松尾スズキ)が主人公という異色の時代劇『ちかえもん』では、近松が「一枚も書けてなーい」とか「ちょっぴり胸キュンしたわしやった」とか普通に独り言を現代語で語り、なぜか突然、歌いだす。第一話「大阪の女」、第二話「悲しくてやりきれない」、第三話「学生街の喫茶店」、第四話「傘がない」、そして第五話では「フランシーヌの場合」のメロディに乗せて、「赤穂浪士の場合」を赤穂浪士姿の松尾と白装束の浪士たちが扇を広げて舞い踊る。初めて見たときは、口あんぐり。それが、見ているうちにそれが楽しみになってくるというところに感動する。藤本有紀は本作で向田邦子賞を受賞している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト