とくに高齢者は、血管の老化によって動脈硬化が進み、血流が悪くなっているため、ただでさえ高血圧になりやすい。心越クリニックの岩間洋亮院長がいう。
「若い人なら汗や尿で塩分を排出できますが、高齢者は腎機能の低下によって、そうした調節機能も弱くなっている。おでんを食べすぎたとたんに血圧が上がり、足がむくんでしまうこともよくあります」
高血圧は脳出血や脳梗塞、心筋梗塞など、命にかかわる病気の引き金にもなる。食べすぎにも注意したい。
安全に食べるには
では、窒息や誤嚥など、おでんによる事故を防ぐには一体どうすればいいのか。
「こんにゃくや牛すじなどは、あらかじめ隠し包丁で細かく刻みを入れ、全体を軟らかくして噛み切りやすくしておくこと」(井上氏)
そのうえで、よく煮込んで軟らかくすることも必要だ。
「私も実践していますが、圧力釜に入れて10~15分ほど調理すれば、はんぺんや練り物など、ほとんどの具は軟らかくなります。ただし、こんにゃくや巾着、タコは逆効果。高齢になって嚥下機能の低下を感じている人は、無理に食べないほうが無難です」(岩間氏)
むせて窒息や誤嚥しないためには、おでんの出汁に気をつけることも大切だ。
「普通に元気に生活をし、嚥下障害がまだ軽い人なら、はんぺんなど汁気を多く含んだ具材を食べる前に、水分を出しておくだけでも効果があります」(井上氏)
リスクを避けながら、冬の風物詩を味わえるようにしたい。
※週刊ポスト2021年12月3日号