岸信介・元首相の娘で安倍家と岸家のゴッドマザーと呼ばれる母・洋子さん(写真/共同通信社)
そのとき立ち塞がるのが、岸田派ナンバーツーの林芳正・外相だ。貴族院議員だった高祖父から続く4世議員で、安倍氏の地元・下関に強固な地盤を持ち、地元での政治的蓄積は林家のほうが安倍家より長い。
両家は中選挙区時代から安倍氏の父・晋太郎氏(元蔵相)と林氏の父・義郎氏(元副総理)が激しく争ってきたライバル関係だった歴史がある。4代目の林氏は今回の総選挙で満を持して参院から山口3区に鞍替え当選すると、月刊誌で「次の総理はこの私だ」(『文藝春秋』11月号)と宣言し、過去8人の総理を生んだ地元山口で“もう安倍の時代じゃない”とアピールしている。
それだけに安倍家も後継者問題に危機感が強い。
跡継ぎ問題を一番心配しているのが岸信介・元首相の娘で安倍家と岸家のゴッドマザーと呼ばれる母・洋子さんだとされる。93歳と高齢だが、この10月には台北駐日経済文化代表処(台湾の駐日大使館に相当)が主催した中華民国建国記念日の式典に安倍氏に代わって出席するなど、なお矍鑠としている。
安倍家は長男・寛信氏(三菱商事パッケージング元社長)、次男の晋三氏、そして生まれてすぐ洋子さんの実家・岸家の養子になった三男で現・防衛相の信夫氏(山口2区)の3兄弟。後継者候補は寛信氏の長男(大手商社勤務)、岸信夫氏の長男・信千世氏(防衛大臣秘書官)と次男(大手不動産勤務)の3人と見られている。
だが、なかなか決まらないのには事情がある。地元・山口の政界関係者が語る。
「洋子さんは自分の目の黒いうちに後継者を決めたい。実家の岸家に養子に出した信夫氏の息子たちは岸家の地盤を継がなければならないから、安倍家の地盤はなんとしても寛信氏の長男に継いでほしいという思いが強い。
しかし、長男は政治家の道は選ばないと断わり続けている。もし彼が後継になるのであれば、安倍事務所に入って秘書になるなりしなければならないが、その動きがない。その点は安倍後援会の中からも心配する声が出ているようです」