ビルの防災センターと防犯カメラのモニター(イメージ、時事通信フォト)

ビルの防災センターと防犯カメラのモニター(イメージ、時事通信フォト)

「万引きを疑いやがって」

 12月11日の名古屋市南区、これまた大型ディスカウント店で自称会社員の37歳の男が棒(のぼり旗)を振り回し、店舗入り口で大暴れの末、駆けつけた大勢の警察官に取り押さえられた。万引きを疑われたか本当かどうかはともかく、こちらも大暴れで店を破壊する必要はない。

「立ち読みが許せなかった」

 同じく11日には宮城県仙台市のショッピングモールで39歳の清掃員の女が立ち読みをしていた客を刃物で切りつけた。勤務態度に問題はなかったとのことだが、真面目に仕事をこなしていたはずの女がある日突然、立ち読みが邪魔だからと刃物で切りつける「ヤバい人」に変貌する。長時間の立ち読みは迷惑かもしれないが刺傷することもない。ターミナル駅、大型ディスカウントショップ、ショッピングモールといった不特定多数の集まる場所で事件が起きているが、そこに都会だ地方だは関係ない。「ヤバい人」はどこにでも現れる。ある日突然、あなたが日常で乗る電車や立ち寄るビルに火をつける人間がいるかもしれない。これが現実だ。

令和の自己防衛術

「さっきの喧嘩とか注意なんかできないわよ、殺されちゃうかもしれないし」

 冒頭の女性の話だが、12月前半の表立ったものだけでもこれだけのわけがわからない事件が起こっている。加えて12月15日には鳥取県倉吉市の駐車場で42歳の会社員の男が55歳の男性に馬乗りになって暴行を加え逮捕された。まったく面識はなかったが交通トラブルとのことで、都会だから危ないとか、こういう姿格好だから危ない、なんて偏見がまったく意味のないほどに見かけ上「普通の人」が「ヤバい人」に変貌する。

「でも相手が子どもだったら注意しちゃうかも、それでも怖い子かもしれないものね、気をつけないと」

 未成年者も会社員も老人も一転「ヤバい人」になる。理不尽な大暴れや落下物による殺人未遂、突然の放火はともかく相手に注意、もしくは不用意に関わってしまったことが遠因の事件も多い。

 道徳正義のために市民として注意しなければ、世の中を正しくしなければという気持ちはわかるが、2020年の緊急事態宣言下では神戸市で25歳の男に「マスクしろ」と注意した65歳の男性が半身不随にされてしまうという痛ましい事件があった。2021年10月にも資材置き場から出てきた71歳の男に「泥棒じゃないか」と声をかけた60代の女性がコンクリート片で殴打され重傷を負う事件があった。

 近年はこうした面識のない他人に対する注意や声かけで事件に発展するケースが目立つが、相手がいつ「ヤバい人」になるかわからないし、その人が「ヤバい人」かすらわからない。実際、筆者はこの日も電車内でノートパソコンを開いていたスーツ姿の若い男が突然、となりの中年男性の胸ぐらをつかむといった光景を目撃している。ノートパソコンで肘を拡げている若い男に中年男性が注意したのが原因らしいが、いつキレるか、「ヤバい人」に豹変するかはわからない。彼はどこにでもいる普通の会社員風の男だった。

 見ず知らずの赤の他人と関わるということは恐ろしいこと、というインターネット空間と同様に考えたほうがいいのかもしれない。たとえリアルな目の前の人であっても赤の他人ならその人のことなど何も知らないわけで、例として挙げたここ半月の表沙汰になった事件(これでもごく一部なのだが)をご覧の通り「ヤバい人」かどうかなんて見分けがつかない。見かけや職業、地域による「ラベリング」などあてになんかならない。踏み込んで言うなら、赤の他人を注意するというのは恐ろしいことなのだ。

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