『M-1』

『M-1グランプリ2021』の優勝者は?(公式HPより)

 だからこそ、「笑い」から最も遠いコンテンツである「報道」を選び、しかも局を挙げた大型特番を編成したのではないでしょうか。

 フジテレビの『ミュージックジェネレーション』も、その狙いは明快。番組紹介欄には、「1クリスマス…セカオワB’z山下達郎ももクロ2ドラマ名曲…髭男ミスチル安室ドリカム中山美穂サザン福山3テンション上がる曲…小泉Ado緑黄色AKBモー娘」と人気アーティスト名が詰め込まれています。

 これは「定番クリスマスソング」「ドラマ主題歌」「テンションが上がる曲」というキャッチーな3つのテーマをそろえ、「昭和・平成・令和それぞれの名曲を家族そろって見てもらおう」としているのでしょう。こちらも「笑い」とは遠い「音楽」というジャンルである上に、「家族で気軽に見られる」というガチンコ感の強い『M-1』とは真逆のスタンスであることがうかがえます。

最終回一週前の大河も15分延長

 もう1つ興味深いのは、日本テレビの『行列』。前述したように19日は、「日本人が好きな映画100」を放送するのですが、同局の『金曜ロードショー』とコラボするほか、出演者が映画コスプレで登場し、ジブリなどの名シーンをたっぷり見せることが予告されています。

これほど力を入れるのは『行列』の放送時間帯が『M-1』の最終決戦にあたるため。「自分の好きな映画は何位かな?」「日本人が好きな映画1位は何だろう?」という興味で引きつけようとしているのでしょう。ただ、それでもランキング企画は録画視聴されやすいコンテンツでもあり、リアルタイム視聴に強い『M-1』には厳しい戦いを強いられそうです。

 ちなみにNHKも大河ドラマ『青天を衝け』の放送時間を15分拡大。来週、最終回を迎えるだけに、「一週前から盛り上げておきたい」という思いが感じられますが、例年にはない試みだけに『M-1』対策の意味もあるのでしょう。

『M-1』が放送されることで、結果的に19日の夜はバラエティに富んだ番組がラインナップされ、しかも力の入った企画がそろいました。視聴率、ネット反響ともに、『M-1』が優位であることは変わらないものの、多くの人が自分好みの番組をじっくり楽しめるのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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