命にかかわる「がんのサイン」
一方、脳腫瘍の場合は腫瘍ができる部位により、身体のさまざまな部位に症状が現われる。菅原脳神経外科クリニックの菅原道仁理事長が語る。
「平衡感覚を司る小脳に腫瘍ができると、20分以上持続するめまいや立っていられないほどのふらつきが起きやすい。その他、下垂体にできると視野の外側が欠けるといった症状があります。また、腫瘍が神経を障害することで、手足が動かしにくい(運動神経線維)、言葉が出にくい(言語中枢)などの症状が出た場合も脳腫瘍の疑いがあります。
共通して注意したいのは、“朝方の頭痛”です。腫瘍によって頭蓋骨の内側の圧力が高まることで頭痛が生じるのですが、圧力は睡眠中に高まります。起床時に頭痛が生じるなら注意しましょう」
耳鳴りや物が二重に見えるという症状が、実は咽頭がんだった、肩や二の腕の痛みの原因が肺がんだったなど、がんの部位から離れた場所に不具合が出ることもある。別掲の図も参考にして、違和感がある場合は医師に相談したい。
「沈黙の臓器」の初期症状
初期症状が現われにくく、「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓、すい臓、腎臓のがんはどうか。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広医師が指摘する。
「3つの臓器とも、がんが発生しても初期に自覚症状がなく、たまたま検査で見つかるケースが多い。たとえば腎臓がんの場合、尿検査をした際にごくわずかの血液が混じっていることで判明する場合もあります。ただし、人によっては尿が泡立つ、脇腹に痛みを感じる、原因不明の発熱が続くといった症状が出るケースも見られます」
2006年に腎臓がんが発覚した、元プロレスラーの小橋建太さん(54)が当時を振り返る。
「今にして思えば、36度7分ほどの微熱が続き、何となく倦怠感がありました。血尿はなかったのですが、濃いオレンジ色っぽい尿は出ていました」
腎臓がんは進行すると、血尿、背中や腰の痛みなど、直接的な自覚症状が現われる。肝臓がん、すい臓がんも同様だが、痛みなどの自覚症状が見られた時には手遅れになりかねない。
「だからこそ、健康診断で異常があれば精密検査を受けたい」と、上医師。
いかに早く異変に気付けるかが重要になる。
※週刊ポスト2022年1月14・21日号