ヒット曲を送り出すターゲットは全世界。EPA=時事
<初の公式ステージにもかかわらず堂々としゃべっていたナムジュン(RM)、
鹿みたいに輝く瞳が美しい顔立ちのソクジン(JIN)、
反抗心が見え隠れする彼独特の眼差しをかろうじて隠していたユンギ(SUGA)、
小ホールのステージを所狭しと力強く踊っていたホソク(J-HOPE)、
ベビーフェイスからは想像もつかない上腕二頭筋があらわになる衣装を着ていたジミン(JIMIN)、
思慮深さをうかがわせる瞳をしていたテヒョン(V)、
まだ少年の面影が残る顔に満面の笑みを浮かべていた15歳のジョングク(JUNG KOOK)>
(『K-POP時代を航海するコンサート演出記』より)
9年たった今、ファン目線で見ても納得のフレーズで、彼らの本質を当初から見抜いていたのかと思わせる。
『K-POP時代を航海するコンサート演出記』より
また、世界でコンサートツアーを行っていればこそ、各国の事情によって公演においての苦労話もあるようだ。
日本の場合、東京ドームクラスの大規模会場のレンタルスケジュールは、韓国はじめ諸外国に比べてかなりタイトなのだという。そのため、キム氏率いるPLAN Aチームは、BTSの翌日に同じ東京ドームで公演を予定していた米歌手テイラー・スウィフトのチームと、公演の会場明け渡しの打ち合わせのためだけに、米・フェニックスで行われていたテイラー・スウィフトのコンサート会場まで行ったこともあるという。
ナゴヤドーム公演では、BTS公演の翌日にBOYS AND MENの公演が控えていた。こちらも会場レンタルの契約上の問題で、PLAN AがBTSのセットを崩した後、リフトなどの韓国資材の一部をBOYS AND MENのコンサートに貸し出し、そのオペレーションまで行ったという。
話題作を発信し続ける韓国ドラマや映画だけでなく、世界に打って出ることのできるコンサート演出もまた、現在の韓国が誇る一大エンターテインメントだ。
熾烈で過酷なチケット争奪戦争も、日常を忘れて大声でアーティストへの愛を叫ぶライブシーンも当たり前の幸せではなかったと知った今。リアルなコンサート会場に足を運べなくても、動画や本を通して、高揚感を与えてくれる彼らのパフォーマンスに思いを馳せてみる。
文/田名部知子