喜怒哀楽を学ぶ機会が減っている(写真/アフロ)

喜怒哀楽を学ぶ機会が減っている(写真/アフロ)

「脳は人体がさまざまな刺激を受けることで活発に活動し、活動すればするほどその部分と関係するシナプスのつながりが強くなり、成長していきます。その脳の活動に必要なのが『糖』であり、その糖をエネルギーに変えるのが『酸素』です。脳は人体全体においては約2%の重量を占めるに過ぎないが、酸素は全体の20〜30%も消費します。それだけ、脳の活動にとって酸素は重要だということです」

 そこで思い出されるのが、新型コロナのパンデミックから私たちの日常に欠かせなくなった「マスク」である。どのようなマスクであれ、自然な呼吸が妨げられ、酸素は一定量、制限される。

 もちろん生まれたばかりの赤ちゃんがマスクをすることはないが、厚生労働省は2才以上のマスク着用をすすめている。前出の米ブラウン大学の研究で、コロナ前とコロナ後の乳幼児の認知機能テストの成績で2割も差がついたのは、「マスクによる酸素不足で脳の発達に影響が出たのではないか」との推測ができるのだ。

 また、マスクをつけていることによる「コミュニケーションの壁」もある。赤ちゃんは親などの目、鼻、口を見て、喜怒哀楽を学ぶ。幼児は相手の顔を見て、「他人の気持ちを理解する能力」を育む。相手の痛そうな顔やうれしい顔から相手の気持ちを察することができれば、その相手とどう接するべきかをイメージできるようになる。

 しかし、新型コロナ以降はマスク着用で相手の表情がわかりづらくなり、コミュニケーション能力や共感力を育む機会が奪われてしまったと指摘される。

「コミュニケーション能力や共感能力を育てるべき乳幼児期にその機会を奪われたことで、認知能力の低下が招かれた可能性があります。そうした事態を防ぐためにフランスでは、相手の表情が読み取れる透明マスクの配布を進めています。日本にもそのような措置が必要かもしれません」(一石さん)

 実際、保育の現場では、マスクを取った大人の顔を見た幼児が怖くて泣き出す場面がある。また、幼児同士がぶつかったときに、マスクで「ごめんね」という言葉が聞こえづらかったり、思いが充分伝わらないため、けんかになるといった事態もよくみられるようになったという。マスク生活が、子供たちをむしばんでいる可能性があるのだ。

※女性セブン2022年2月10日号

(共同通信社)

コロナ禍で試験に臨む子供たち(共同通信社)

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