黒木華さんという役者への大いなる期待から見始めたこのドラマ。凛々子のキャラクターが今後、大きく弾けたり鮮やかに転換する瞬間が来るのかどうか。黒木さんの役者としての技量や才能が輝く瞬間を見たい。
そもそも大学在学中に野田秀樹氏のワークショップに参加し役者の才能を見い出された黒木さん。野田演出はセリフや感情表現だけでなく、走り回ったり弾丸のように言葉を放ったりと、高い身体的能力が要求されます。それが結果として、演じる時の屋台骨となりバネとなり思い切りの良さや捨てることを恐れない演技の力になっていく。別の人物に次々になりきっていく力に。
そういえば、同じく野田演出によって鍛えられた役者であり、今主役として注目を集めている人がいます。そう、深津絵里さんです。今週の朝ドラの中で見せた転換は実に鮮やかでした。
深津さん演じる雉真るいは、自信がなく引っ込み思案。しかし、結婚を反故にしようとした錠一郎に「一緒に苦しみたかった」「何が私の幸せか勝手に決めないで」と切り返す。そして「ジョーさんと幸せになることはあきらめない」「あなたとひなたの道を歩いていきたい」と宣言する。
それまで弱気で小さく見えたるいが、一転して「強さ」を見せつけた瞬間でした。その転換の演技の鮮やかさに、多くの視聴者が息をのみました。
転換といえば、やはり放送中の『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)で、いったい誰?という不気味な感じで登場した永山瑛太さんもすごい。金髪で何もしゃべらず気配を消す。つい昨春には『リコカツ』(TBS系)でコミカルマッチョな自衛官を演じていた人と「本当に同じ役者なのだろうか」と目をこすって二度見してしまいました。やはり、役者冥利につきる大転換と言えるでしょう。
『ゴシップ#』はオリジナル脚本ということで、この先まだまだ期待が膨らみます。黒木さんの役者としての輝きと転換が見られるかどうか、今後に注目です。