11月に行った会見では、1時間半にわたり辞職の理由を語った(写真/時事通信フォト)
質の悪いレモンがあちこちに広がる
米国では、質の悪い中古車のことを“レモン”に例える。中古車販売のように、見ただけでは実際の品質や価値が分からない不良品ばかりが出回ってしまう市場をレモン市場という。よくタレントやアイドルはその人自身が商品だと言われるが、議員も同じく自分自身が商品だ。物議を醸したり逮捕される議員たちは、質が悪いレモンと言える。
立候補する時は良いことばかり並べ、自己価値を最大限にアピールし頭を下げるが、そこに本質は見えてこない。だから立候補者や議員らと有権者の間には情報格差が生じる。経済学で言う「情報の非対称性」だ。1票を投じた有権者からすれば、レモンを買わされたような騙された気分になるだろう。
各党が立候補者を選別し選挙活動を応援するのは、この情報格差を無くすためもあると思いたいが、実際は新人、ベテランにかかわらず各々の事情が絡んでいるらしい。「新人はレモンと言えるのか?」と思う人もいるだろうが、立候補者の過去の経験や経歴はさまざま。新人でも質の悪い者は問題を起こすのだ。
実際にはレモンであるにもかかわらず、各党は選挙で「良質だ」と宣伝し投票を強力に後押しする。しかし、ひとたび問題が起きるとリコールやメンテナンスをすることなく「除名処分」で幕引きを図り、「レモンを見極めるだけの情報収集が難しかった」と言い訳する。政界は、猛烈に勧めて高値で買わせた後は、アフターサービスゼロ、クレームも受け付けないというなんともひどい店舗みたいなのだ。
質の低い粗悪なレモンが1つ出てくると、次々と同じようなレモンがあちこちで見つかるのが今のネット時代だ。しかし、それが度重なれば、レモンの価値も販売した店の信用もどんどん低下していく。選挙で言えば、どの党を信じればよいのか、どの候補者に任せるべきか分からなくなり、結果、適当に投票したり選挙に行かない人が増えることになる。
良質なレモンをいかに選び出すかは、各党の情報収集力と人選力がカギになる。品質が良いレモンが数多く並び、誰にしようか期待を込めて迷うほどになれば政治も変わるのに。