2022年元日の「毎日新聞」
読者に取材テーマを求めるやり方で先行しているのは地方紙だ。
その先駆けが西日本新聞(本社・福岡市)が2018年にスタートさせた『あなたの特命取材班』だ。専用の投稿サイトやLINEなどで調査依頼を受け付け、記者が取材して記事にすることから「オンデマンド調査報道」とも呼ばれ、同社は現在、他の地方紙やテレビ局などのローカルメディア31媒体と協定を結び、記事を共有している。独自に始めた地方紙も多い。
元朝日新聞記者でメディア・ジャーナリズム論の平和博・桜美林大学教授が語る。
「これまでの新聞報道はニュースを空からばらまくように一方通行で提供してきた。が、スマホが普及したネット社会では通用しません。何か事件や事故が起きた場合、現場に居合わせた中学生でも写真を撮影して配信したり、ツイートをしたりしただけでニュースを発信できる。新聞記者やカメラマンが後から現場に行っても太刀打ちできない。メディアと読者が同じ立場になっている。
そうしたメディア環境だからこそ、読者から暮らしの疑問、地域の困り事、行政・企業の不正告発まで情報提供や調査依頼を受け、新聞記者がプロの取材力で記事にするという、双方向の取り組みが意味を持ってくる。地域との結びつきが強い地方紙だからこの新しい“サービスとしてのニュース”が生まれてきた」
読者参加型の記事だけでなく、福井新聞では、社会部の記者4人が町おこしに参加し、その取り組みを連載している。
※週刊ポスト2022年2月18・25日号