『ムチャブリ』

『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』は3分の動画に

何話見逃されてもチャンスは残る

 最近の傾向として見逃せないのは、テレビマンたちの中でダイジェスト版の公開に関する意識が変わりはじめていること。

「ネット中心の生活を送る人、忙しくて時間が取れない人、時間効率にシビアな若年層にもアピールしていかなければ、視聴人数を増やすことは不可能」、「ダイジェスト版へのリンクをツイッターやインスタグラムなどの番組アカウントで拡散して目にふれる機会を増やしていこう」「よほどの大ヒット作でない限り、いきなり有料動画配信サービスに誘導するのは難しい」「違法アップロードの対策にもなる」などの声が局内であがっているようなのです。

 ちなみに、番組ホームページや局のYouTubeチャンネルだけでなく、TVerでもダイジェスト版を公開している連続ドラマが多いのですが、その一方で、完全版を見られるのは基本的に放送から1週間のみ。「完全版を見たい人は有料動画配信サービスの会員になってください」という一線はしっかり設けているのです。

 これは言わば各局の関係者たちが、「理想を追い求めるのではなく、現実的な策を採りはじめた」ということでしょう。

 ダイジェスト版を公開することで、「1話見逃されたらもう見てもらえるチャンスは少ない」ではなく、「何話見逃されても、見てもらえるチャンスは残っている」というポジティブな感覚に変わりはじめているのです。むしろ現在では、「ダイジェスト版の公開は、リアルタイム視聴や有料動画配信サービスにつなげる最善の方法という考え方のほうが多い」と言っていいかもしれません。

突然不在

『鎌倉殿の13人』も、見逃した人や新たな視聴者に向けた再放送も

今後はバラエティなどにも波及か

 そのようにテレビマンたちの感覚が変わりはじめた背景にあるのは、「連続ドラマの価値が見直されている」という業界内の動き。これまで視聴率ばかりが絶対視されていた評価指標の中に、配信再生数が含まれるようになり、また、海外配信での収入増も視野に入ってきたことで、連続ドラマを取り巻く風向きが一変しました。

 また、ネットユーザーにはスポンサーの好むコア層(13~49歳の男女)が多く、しかも彼らにとって連続ドラマはメインコンテンツの1つ。「今後ネット広告収入を増やしていかなければいけない」という事情もあり、彼らと連続ドラマの接点になりやすいダイジェスト版を公開するのは自然な流れにも見えます。

 連続ドラマはバラエティや情報番組などと比べると、配信再生数だけでなく、録画視聴率も高く、日々報じられている視聴率以上に見ている人の多いコンテンツであることは間違いありません。これまでは「配信や録画で見られていても視聴率が低ければ意味がない」などと過小評価されていたところがありましたが、現在では「連続ドラマでどう稼いでいくか」を考える存在に変わったのです。

 そのためには「ダイジェスト版では良さが伝わらない」などと理想論を言ってはいられません。出演者はもちろん、プロデューサー、脚本家、演出家などのスタッフも、完全版を見てもらいたいものですが、それ以前に「まずはダイジェスト版でも、見てもらってナンボ」という意識があるのでしょう。

 ダイジェスト版のニーズは高いだけに、今後はバラエティ、情報番組、音楽番組、スポーツ番組などにも広がっていくのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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