ドラマの視聴方法がテレビだけではなくネットにも広がっているが、そんななか各局が新たな動きを見せている。それは放送後に、ダイジェスト版をネットで公開するというもの。その狙いとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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このところ連続ドラマの放送終了後、番組ホームページや各局のYouTubeチャンネルに、各話のダイジェスト版を公開する動きが急速に進んでいます。
その最たるところは、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK)。番組ホームページの「あらすじ」に、「だいたい2分でわかる第〇週ダイジェスト」がアップされ、一週分の約75分の映像が約2分にまとめられています。
民放各局の主な連続ドラマに目を向けると、まずフジテレビは、『ミステリと言う勿れ』の各話が8~9分程度のダイジェストにまとめられ、犯人や結末も惜しげなく公開。『ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇』は「忙しい人のための3分間でだいたいわかるダイジェスト」、『ドクターホワイト』(カンテレ)は2分程度の「赤ペン瀧川が解説!第〇話をおさらい!」という動画を公開しています。
次に日本テレビは、『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』が「3分でわかる!第〇話振り返り!」、『逃亡医F』は約5分のダイジェストを公開。特筆すべきは『真犯人フラグ』で、各話約5分のダイジェストに加えて、「菱田朋子の謎まとめ」「林洋一の謎まとめ」「木幡由美の謎まとめ」など怪しい登場人物の約5分まとめ動画を次々に公開し、終盤に入って「1分でわかる!〇話までの真犯人フラグ」も追加されています。
テレビ朝日は、『となりのチカラ』が「だいたい5分でわかる第〇~〇話ダイジェスト」、『愛しい嘘~愛しい闇~』が「第1~4話ダイジェスト」の「3分で簡単!丸わかり編」と「15分でジックリ考察編」を公開しています。
TBSは、『DCU』が「5分でサクッとわかるダイジェスト」、『妻、小学生になる。』が各話約30秒の「ダイジェストマンガ」を公開しています。
本来、連続ドラマは放送と同じ長さで見てもらいたいものであり、実際にこれほどコンパクトにまとめたダイジェスト版が公開されることは、「作品やスタッフとキャストを否定する」という観点からめったにありませんでした。映画業界では数分にまとめた「ファスト映画」で逮捕者が出るなどネタバレが問題視される中、なぜここにきて各局がダイジェスト版の公開を進めているのでしょうか。
再放送ではカバーできない層への訴求
もともと連ドラは、1話完結型の刑事・医療・法律ドラマなどを除いて、「1話見逃したらついていけなくなる」「途中から新たな視聴者を獲得するのは難しい」などと言われていました。
実際、現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)も、見逃した人や新たな視聴者に向けた「まだまだ間に合う!最新話まで一挙放送」を16・17日の2夜にわたって全6話を再放送しました。また、民放も一挙放送ではないものの、見逃した人や新たな視聴者向けに、深夜帯や土日の午後帯で再放送しています。
また、各局には、NHKオンデマンド、FOD、Hulu、TELASA、Paraviなどの有料動画配信サービスがあり、連続ドラマはその会員数を増やし、収入を得るための重要なコンテンツ。これまでは「ダイジェスト版を公開したら、会員数が増えないのではないか」「配信での収入を減らすようなことはすべきではない」という見方が大勢を占めていました。
しかし、再放送はあくまでテレビ視聴者という枠の中での話に過ぎず、ネット中心の生活を送る人には訴求できていません。忙しくてなかなか時間が取れない人や、時間効率にシビアな若年層も含め、「短時間で見られるダイジェスト版で興味を持ってもらい、テレビでのリアルタイム視聴につなげよう」、さらに「自局の有料動画配信サービスで完全版を見てもらうきっかけにしよう」という狙いがあるのです。
そんな狙いが明確に感じられるのは、朝ドラのダイジェスト版。もともと朝ドラは、総合テレビで8時~と12時45分~、BSプレミアムで7時30分~と23時~放送があり、さらに総合テレビで土曜8時~「1週間分のダイジェスト」、BSプレミアムで土曜9時45分~「1週間分の一挙放送」もあり、視聴機会の多さは群を抜いています。
ただ、ネット中心の生活を送る人、忙しくて時間が取れない人、時間効率にシビアな若年層へのアプローチを考えたとき、「それだけ放送しても、まだ届いていない層があり、ダイジェスト版で訴求しよう」ということなのでしょう。