見返りを求めないシンデレラの魔法使いのおばさんになるべし
“人生の3分の1以上”を占める、おばさんとして過ごす長い時を、彼女たちのように楽しく朗らかに過ごしたい。時代の主役といっても差し支えないほどの存在感を持ち、人生の選択肢も多彩にある現代において、難しいことではないだろう。しかし、辛口ドラマ評で知られるコラムニストの今井舞さんは「落とし穴もある」と語る。
「美容医療が発達したいま、顔のアンチエイジングはできたとしても、心や品性は整形できません。若い頃は愛嬌に隠れていたデリカシーのなさが、年齢を重ねて照れや恥じらいが削ぎ落とされてむき出しになり、嫌われるおばさんになるケースも少なくない。プライベートに口を挟んだり、公然と人の悪口を言うなど親切と紙一重のデリカシーのなさは、おばさんが最も嫌われる要素です。これからの中高年は“マナーのアンチエイジング”が必要です」(今井さん)
古今東西のおばさんを研究し、その定義を再構築したエッセイ『我は、おばさん』として著した文筆家の岡田育さんは、見返りを求めないことが大切だと語る。
「シンデレラの魔法使いのおばさんは、杖の一振りでかぼちゃの馬車やドレス、靴を与えます。ですが一切、感謝や見返りを求めない。『いま泣いている女の子が笑顔になれるなら、お安い御用よ、舞踏会で遊んでいらっしゃい』と、軽い気持ちで簡単な魔法を“奢る”だけです。
もしも魔法使いが『ドレスの色に文句を言うな』とか『私の代わりに王子様をゲットしてきて』と言ったらそれはパワハラと一緒です。相手に強制したり見返りを求めたりすることなく、無償のおせっかいを焼くことができれば、素敵なおばさんになれるはずです」(岡田さん)
“乙女オバさん”を自称し、2月初めに同名のエッセイが発売された女優の南果歩(58才)も、「余裕」と「優しさ」が必要だと声をそろえる。
「そのためにはまず、自分が人生を楽しんで幸せになることが大切です。その幸せは池に小石を投げ入れたときのように、輪になって他人に広がります。
若い頃、ちょっとインナーが出ていたりしたら、見知らぬおばさんから『あなた、見えているわよ』と教えられましたよね(笑い)。そういうおばさんには年齢とともに積み重ねた経験による余裕と優しさがあり、それを他人に分け与えることができる。そんなおばさんが増えれば、親切や幸せが広がって、少しだけ世界が平和になる気がしませんか? あなたも乙女オバさんになって、世の中をほんの少し優しくしていきましょう」
いまこそ、あなたの心に眠るおばさんの力を信じよう。
※女性セブン2022年3月10日号