両校の投打の成績や勝ち上がりを比較しても、「客観的に判断した」という根拠は見当たらない。選考委員の印象論で大垣日大を選出したように思えてしまう。
選考会後、東海3県と呼ばれる愛知・岐阜・三重から1校も選ばれず、静岡から2校が選ばれることを回避したという疑念も生まれた。鬼嶋委員長は「地域性は考慮していない」と話したが、毎日新聞としても、春夏を通じて初出場である聖隷クリストファーが選出されたほうが、話題を作りやすくより新聞の販売戦略に活かせるはずであるため、静岡2校を選考委員が避けたかったとは筆者も思わない。
「33校目」は、あるかもしれないと思ったが…
小雪が舞う中、会長との問答は続いた。日本高野連として、今後、選考委員会で話し合われた内容を、説明するつもりはないのだろうか。
「誰への説明でしょうか。高校(聖隷クリストファー)への説明ということなら、静岡県高野連の渡辺理事長が選考委員会の過程を知っているので、選考結果については渡辺理事長から高野連の代表として聖隷クリストファーの監督に伝えられ、監督から生徒に伝えられたのではないでしょうか。私自身は、選考委員会の議論の内容を詳しく把握しているわけでないので、私から詳しい説明はできません。準優勝までして選ばれなかったことに関しては聖隷の選手に同情を禁じ得ませんけれども、8人の選考委員が合意された結果なので、納得してもらうしかない。どの点を比べてどっちが上だった、下だったと言ってあげることは可哀想ではないでしょうか」
なぜ日本高野連は、あるいは選考に携わった選考委員は、選考の経緯の公表を頑なに拒むのか。
「一般社会でも人事の話とかは非公開である。私の場合は、研究プロジェクトの選考に携わったことが何回もあり、10も20もある候補課題から何件か選ぶような会議にも出ているが、会議は非公開であり、参加者には守秘義務が課される。いずれの場合も選考資料は、シュレッダーにかけたり、回収されたりする。これと同様に、鬼嶋さんも渡辺さんも守秘義務を守って詳しいことを語らないのではないでしょうか」
多くの野球人やファンが今回の選考に疑問を抱く中、このまま32校で選抜が開幕すれば、何も悪くない大垣日大のナインに対して心ない野次が甲子園に飛び交う恐れだってある。今回の騒動で心を痛めているのは聖隷の選手だけではない。
「私もそう思います。ですからこれ以上騒ぎ立てず、そっとしておいてやるのが良いのではないですか」
私はそうは思わない。日本高野連が丁寧に説明しないからこそ、大垣日大にまで批判が向くのではないか。私が聖隷の救済を求める記事を発表するたびに、「大垣日大は出場を辞退すべきだ」という筋違いな声も届く。いまも続く混乱を収束させるための策は、私はひとつしかないと思っていた。つまり、大垣日大の選出はそのままに、聖隷に対し33校目の扉を開くこと。それを私は日本高野連に求めるべく取材を続けて来た。寶会長の脳裏に「33校目」の選択肢が浮かぶことはこれまで一度もなかったのだろうか。
「うん、まあ、そういう手も救済策としてあるかもしれないなとは思いましたけど、それをやったら他の地区の補欠校はどう思いますか。東海地区は本当に2校の実力が拮抗していたようですが、他の地区だって拮抗していたかもしれない。(神宮大会枠も含め7枠あった)近畿地区にしてもベスト8の近江高校が選ばれなかった。(関東大会ベスト8の)東海大相模も(東京大会準優勝の)二松学舎大付との比較となり、出場がかなわなかった。言い出したらきりがないですし、33校どころか36校、37校になりかねない。2月10日にコメントしたように、32校は最終のものであります」