疑問を差し挟む根拠はありません
工学者である寶会長は母校でもある京都大学で教授を務め、硬式野球部の監督にも2度就任。2度目の監督在任中の教え子として、同大から史上初めてドラフト2位指名された田中英祐(元千葉ロッテ)がいる。2月20日の日曜日の午後、会長宅を訪れると、スタジアムジャンパーを羽織って玄関先に現れた。
選抜の代表校を決する選考委員会には「21世紀枠特別選考委員会」と5地区にわかれた「地区別小委員会」がある。小委員会の議論には参加しないものの、選考委員会全体の選考委員長を兼任する日本高野連の寶会長に、単刀直入に訊ねた。選考委員会は正当に行われたのか──。
「当然です。9人いた東海地区選考委員のうち、当日は8人が出席され、最終的に8人全員が合意した結論だと存じています。選考委員会メンバーの意見は拮抗していたようであり、岐阜大会、静岡大会を含め、両校の打率や防御率などを比較検討された。全委員が東海大会全試合を見たわけではないと思いますが、分担して毎試合誰か委員が担当して見ていたはずであり、そうした試合内容の情報も加味されたと思います」
鬼嶋委員長は東海大会の1、2回戦が行われた日、選考委員に断りを入れた上で、東京の神宮球場で早慶戦のテレビ解説をしていた。寶会長は「最終的に8人の委員が合意されたのであるから、私としては選考結果に疑問を挟む根拠はありません」と話した。
ここで、東海大会における聖隷と大垣日大のデータを比較してみたい。
・聖隷クリストファー(4試合) 打率.330、1試合平均の得点6.75、総失点21(うち自責点16)、防御率4.23
・大垣日大(3試合) 打率.291、1試合平均の得点5、総失点16(うち自責点9)、防御率3.11
試合数に違いはあるが、打率では聖隷が大きく上回っている。反対に防御率では大垣日大が1点以上低いが、1試合平均の得点は聖隷が1.75点ほど上回る。確かに投手力の差はあるのかもしれないが、聖隷はエースが1回戦で右ヒジを疲労骨折してその後の登板ができない中での戦いだったことも評価すべきだ。
それぞれの勝ち上がりを見ても、聖隷は2回戦で中京(岐阜1位)から、1対3とリードされた9回表に3点をあげて逆転勝利し、準決勝でも愛知2位の至学館を相手にサヨナラ勝利。一方、大垣日大は2回戦で優勝候補の愛知大会王者・享栄に勝利し、鬼嶋委員長はこの点を選出理由のひとつに挙げたが、聖隷は岐阜大会決勝で大垣日大に勝利している中京に勝利して決勝に進出しているのだ。